5月の金融市場では、月初に発表された4月の米雇用者増加数が予想を大きく下回ったことでインフレや金融緩和縮小への懸念が後退し、米欧の主要株価指数が揃って最高値を更新しました。しかし、月半ばには米CPI(消費者物価指数)の伸びが予想を超え、インフレ懸念が再び強まったことで主要先進国の長期金利が上昇し、世界の株式市場は下落しました。月末にかけては、経済指標が振るわなかったことや米インフラ投資計画案の規模が抑制されたことなどから長期金利が落ち着きを取り戻し、株式市場も上昇傾向となりました。

米欧の金融政策動向に注目
6月は引き続き、米国の金融政策動向に注目が集まります。FRB(米連邦準備制度理事会)は足元の物価上昇は一過性であると繰り返し述べ、金融緩和の正常化に向けた議論は時期尚早との見解を示しています。しかし、市場では量的緩和縮小への警戒感がくすぶっており、上旬に発表される雇用統計やCPIなどの経済指標が注目されます。また、15-16日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)において、将来的な政策の見直しが示唆されるような場合などには、大きな市場変動につながる可能性もあります。

欧州では、10日にECB(欧州中央銀行)理事会が開かれ、経済や物価の見通しが示されるほか、資産購入のペースについても議論される見込みです。ECBは3月の理事会において、資金供給策「パンデミック緊急買入プログラム」の4-6月の資産購入ペース加速を決定しましたが、ワクチン接種の進展により景気回復期待が高まる中、7月以降も同ペースが維持されるかに注目が集まります。

国際会議が相次ぐ
6月には国際的な首脳会議が対面形式で相次いで開催されます。2年ぶりの開催となるG7(主要7ヵ国)首脳会議には、バイデン米大統領や菅首相が初参加するほか、オーストラリア、インド、韓国の3ヵ国も招待されており、強権姿勢を強める中国やロシアへの対処や、気候変動問題などが議論される予定です。バイデン大統領はその後も就任後初となるNATO(北大西洋条約機構)首脳会議や米露首脳会談への出席を予定しており、トランプ前米大統領時代に亀裂が目立った国際関係の修復が期待されます。

新型コロナウイルスと東京五輪
日本では、東京、大阪を含む10都道府県で緊急事態宣言が継続される中、7月23日の東京五輪開幕に向けた準備が大詰めを迎えます。海外からの観客受け入れは既に断念されているものの、国内観客の有無や上限については6月中に判断される見通しです。

【図表】6月の注目される金融政策および政治・経済イベント
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。スケジュールは予告なしに変更される可能性があります。
  • 上記は過去のものおよび予定であり、将来を約束するものではありません。