2020年9月下旬以降、米国のMLPのパフォーマンスは持ち直し基調にありますが、今月はそのペースが速まり、米国の株式やREITと比べても、上昇が顕著です。
この背景として、新型コロナウイルスのワクチン接種の普及などに伴ない、米国の経済活動が正常化に向かうとともに、エネルギー需要の回復が進むとみられており、WTI原油先物価格が2018年10月以来の高値水準となるなど、原油市況が足元で強含んでいることが挙げられます。
MLPは、原油や天然ガスを生産地から需要地などへ送るパイプラインや貯蔵施設といった、エネルギー・インフラを長期契約に基づいて運営しています。エネルギー関連事業の中でも川中部分にあたるMLPの事業は、エネルギー価格や景気変動の影響を比較的受けにくいとされています。
しかしながら、原油価格が頭打ちとなった2019年4月以降、調整に転じたMLP価格は、2020年3月にはコロナ・ショックにより、他の主要資産ともども急落しました。その後、強力な金融・財政政策が世界で相次いで導入されたことなどに伴ない、MLPも持ち直したものの、回復は米国の株式やREITと比べると限定的でした。その主な背景も、原油価格の影響だったと考えられます。それを裏付けるように、11月以降、原油価格の回復が勢いづくと、MLPの持ち直しペースも速まりました。
米国では、ワクチン接種の普及などに伴ない、ヒトの移動が増え始めています。加えて、5月末の祝日メモリアル・デーからドライブ・シーズンに入ったこともあり、ガソリンの需要が回復していることも、原油価格の押し上げ要因となっています。
原油については、OPEC(石油輸出国機構)および非加盟の産油国からなるOPECプラスが、市況の持ち直しを受け、協調減産の規模を縮小しつつあるなど、供給が拡大に向かっています。一方で、経済活動の正常化の進展に連れ、世界経済が回復するのに伴ない、需要も拡大する見通しです。IEA(国際エネルギー機関)は6月11日、世界の原油需要は2022年末までにコロナ禍前の水準を回復するとして、需要に応じるべく、OPECプラスの協調減産の緩和が必要との見解を示しました。
なお、MLPは足元で堅調とはいえ、一足先にコロナ禍前の水準を回復した株式やREITと比べると、依然として出遅れ感があります。そして、EBITDA*などの利益見通しが改善傾向にあることや、株価EBITDA倍率が示すバリュエーションが平均水準を下回っていること、さらに、MLPの利回り水準が他資産と比べて依然、高いことなどを踏まえると、今後も堅調な推移が期待されます。
利払い前・税引き前・減価償却前利益
![【図表】[左図]米主要資産のパフォーマンスと利回りの推移、[右図]MLPの予想利益とバリュエーションの推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1715.jpg)
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