2020年、コロナ禍で多くの国が導入した外出制限を背景に、オンラインで音楽や映像などを視聴する動画配信サービスの利用者が急増しましたが、最近、“一過性なのでは”との声が聞かれます。しかし、消費者は利便性を体験し、供給側のビジネス機会を創出した事実に鑑みると、動画配信ビジネスは定着する可能性が高いと考えられます。
手放せなくなったデジタル玉手箱
定額動画配信サービスは、オリジナルコンテンツや見逃し配信などが充実していることもあり、消費者は、時間を気にせずどこでも視聴できるといった利便性を体験しました。
芸術分野では、バーチャル美術館で各作品に関する音声ガイドのほか、高画質なズーム機能で、肉眼では見えない作品の細部や、天井画、建築の細部を鑑賞することができるなど、オンラインならではのサービスが充実しています。
このほか、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントと米Netflixの独占ライセンス契約締結や、米ワーナー・ブラザースが新作映画を劇場公開と同時に動画配信を始めるなど、映像製作会社は、クリエイティブな作品を短期間に多くの消費者に届ける手段として、動画配信との共存を進めました。
SNSの普及が動画配信ビジネスを後押し
TikTokやInstagram、YouTubeなど、動画コンテンツを拡散させやすいSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及が、動画配信ビジネスを後押ししています。
例えば、音楽事務所に所属していなかったアーティストが、短期間でメジャーデビューし年末恒例の歌番組に選出されましたが、これは、SNSを通じて配信したパフォーマンス動画が注目を集めたことなどが背景にあります。
また、日本の著名アーティストが野球スタジアムで行なった無観客の有料配信ライブでは、視聴者推計約50万人、約6.5億円を売り上げました。通常、最大収容人数約2万人が入ってもチケット売り上げは約2億円ですから、大きなビジネス機会であったといえます。また、一方的な配信ではなく、VR(仮想現実)上のアバターを使ったファン同士のコミュニケーションや関連グッズの購入など、動画視聴以外の付加価値も生むことができたのです。
人は一度便利さを知ると元に戻りたくなくなるものです。コロナ禍をきっかけに、消費者はデジタル技術の進化で臨場感あふれる映像を楽しめるようになり、供給側はAR(拡張現実)やVR、MR(複合現実)を利用した新たな表現手法も使いながら、映像や芸術、コンサートなどを多くの消費者に届けられるようになりました。
今後は、リアルとオンラインの共存がスタンダードになっていくことに疑いはないと思われます。
![【図表】[左図]定額動画配信サービスに加入する主な決め手、[右図]世界の定額動画配信市場の規模・契約数の推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1716.jpg)
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