米国では、6月15~16日に開催されたFRB(連邦準備制度理事会)のFOMC(連邦公開市場委員会)が、金融緩和の縮小に前向きととれるタカ派的な内容となったのに続き、18日には、一部の地区連銀総裁が2022年終盤にも利上げが開始されるとの見通しを示しました。これらを受け、21日に米長期国債の利回りが時間外取引で急低下したほか、日本株も急落するなど、世界的に動揺が拡がりました。しかし、その後、市場は落ち着きを取り戻し、FRBのパウエル議長が性急な利上げは行なわないと議会で証言した22日には、米ナスダック総合指数が最高値を更新しました。
今回のFOMCでは、市場の予想通り、現行政策の継続が決定されました。ただし、量的緩和の縮小、いわゆるテーパリングに関して、いつどのように始めるかといった予備的な議論が開始されたとパウエル議長が明かしたほか、2023年に2回の利上げを想定した見通し(FOMC参加者の予想の中央値)が示されたことなどが、市場で驚きをもって迎えらえました。
さらに、緩和的な金融政策の継続に前向きなハト派と目されている、セントルイス連銀のブラード総裁が18日、インフレ率の加速を想定し、2022年終盤に利上げが行なわれるとの見通しを発表しました。同氏は、今年はFOMCでの議決権を持っていないものの、2022年にはこれを得ることもあり、市場の動揺が大きくなりました。
しかし、22日の議会証言でパウエル議長は、経済活動の再開に伴ない、足元の物価上昇は想定より大きくなっており、より長く続く可能性もあるものの、時間とともに落ち着くとの見解を改めて示しました。さらに、インフレ懸念のみに基づいた性急な利上げは行なわないと述べたことなどから、利上げが米景気の腰を折りかねないとの懸念の後退につながった模様です。
なお、下の左表のとおり、FOMCの見通しでは、2021年のGDP成長率が7.0%に上方修正されただけでなく、高成長の反動が見込まれる22年は3.3%で修正なし、続く23年は0.2ポイント上方修正の2.4%と、1.8%とされる潜在成長率を大きく上回る好成長が続くとみられる一方、インフレ率は21年こそ上振れするものの、その後は2.1%にとどまると見込まれています。このように、景気の先行きに対する自信の深まりが、利上げ見通し前倒しの背景だとすると、今後の企業業績の拡大が株価を一段と押し上げることも想定されます。ただし、利上げのタイミングが前倒しになれば、それに先立って進められるはずのテーパリングの開始時期が早まったり、実施ペースが速まることなども考えられ、一時的な市場の動揺につながる可能性もあります。
![【図表】[左図]FOMCの見通し(中央値)、[右図]前回の金融政策正常化の歩み](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1719.jpg)
- 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。