グローバリゼーションが進む中、世界規模のサプライチェーン(供給網)が構築され、企業は生産体制の最適化を図りました。しかし、コロナ禍などの影響でサプライチェーンが一時機能不全に陥ったため、企業は生産体制の再構築を迫られています。

コロナ禍で分かった落とし穴
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、各国で都市封鎖はもとより輸出規制も導入された影響で、サプライチェーンの脆弱性が露呈しました。特に、世界の工場といわれる中国の機能不全は、自動車やハイテクなどの産業に大打撃を与えました。

このような状況下、各国はサプライチェーンを早期に強靭化する対応を打ち出し、自国回帰を含む生産拠点の多元化や代替技術の開発などの支援を加速させています(左下表)。

個別にみると、米国は、台湾に大きく依存している半導体の国内生産の強化や、安全保障の観点で中国メーカーからの輸入を制限するなど、国内回帰を主導しています。一方、中国は産業政策である「中国製造2025」において、製造業の競争力強化に取り組んでおり、ロボティクスなど重要分野の国産化を急いでいます。

新たな生産拠点で欠かせないロボティクス
そもそも、企業がサプライチェーンを構築した目的は、生産から物流、販売までを最適化し、コストを抑えて収益性を高めることにあり、人件費の安い新興国を生産拠点として重視してきました。しかし、貿易摩擦の激化やコロナ禍の影響でサプライチェーンが混乱したことをきっかけに、企業は多少コスト増になっても生産拠点を分散して安定供給できる体制へと転換を図ろうとしています。

例えば、日本の電子部品メーカーでは、国内拠点も含めて2拠点以上で同じ部品を作る体制を構築する準備を進めています。また、進出した国で生産し、同国・地域内に供給する「地産地消」の戦略などを検討している企業もあります。

とはいえ、新たな生産拠点でも、コストを抑えて収益性を高めることが求められます。そこで必要となるのが、高品質な製品を安定して生産できる産業用ロボット、少量生産への対応や生産過程の簡素化を図る3Dプリンティング、工場の生産工程を自動化するFA(ファクトリーオートメーション、他資料へのリンク)といった、ロボティクス技術なのです。

このように、想定外の危機が起きてもサプライチェーンを維持し、どの生産拠点でも作業の高速化・効率化を図るためにはロボティクスの技術が不可欠であり、今後、活用が一層進むとみられます。

【図表】[左図]日米欧の主なサプライチェーン強靭化策、[右図]生産拠点分散化のイメージ
  • 上記は過去のものおよび計画であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。