新型コロナウイルス感染拡大の早期抑制を果たした中国では、国内の新規感染がほとんどなかったことや、副反応への不安などから、当初はワクチン接種がなかなか普及しませんでした。こうした状況を受け、集団免疫の獲得や海外との往来正常化をめざす当局は、卵や牛乳、洗剤といった日用品の配布や、商品券・遊園地の入場券との引き換え、果てはアイドルとの握手会など、接種率向上のためのさまざまな「奨励策」を繰り広げました。加えて、変異株流行への懸念などもあり、中国国内でのワクチン接種は一気に加速し、足元で累計12億回を超える水準となりました(2021年6月末時点)。これは世界で実施されたワクチン接種の4割以上に相当します。中国では感染が抑制された後も厳しい行動規制が敷かれていたことから、接種率の向上は規制の緩和を促し、遅れていた個人消費の回復などにつながると期待されています。

中国では、新型ウイルスの感染拡大以降、国を挙げたワクチン開発が行なわれており、開発から使用まで僅か11ヵ月という史上最速のペースで最初のプロジェクトが進行しました。現在、国内での使用が認可されたワクチンは5種類、臨床試験段階に入ったものは20種類以上あるとされています。

WHO(世界保健機関)は今年5月、中国のシノファーム社製ワクチンを、続いて6月にはシノバック社製ワクチンを、欧米以外で開発されたものとして初めて緊急使用リストに追加しました。これにより、ワクチンの公平な配分をめざす国際的な枠組みである「COVAX」を通じた供給が可能となるほか、ワクチンの審査体制が整わない途上国などが緊急使用を承認する際の目安にもなるとみられます。

一方で、中国製ワクチンは先進国で開発されたものに比べて効果が低いとの報道もあります。しかし、中国製ワクチンは、圧倒的な供給力に加え、摂氏2~8度での保管が可能なことから、超低温での保管が難しい途上国などでニーズが高いと見込まれています。これまで90以上の国・地域で中国製ワクチンの使用または緊急使用が承認されていることは、その証左であると考えられます。こうした中、中国政府は、COVAX向けにもワクチン1,000万回分を供給するほか、年末までにさらに30億回分を生産するとも表明しており、供給問題に直面していたCOVAXの加速が期待されています。

中国ではこれまで、ワクチンといえば海外製品が主力でしたが、近年では海外企業との連携を通じ、中国企業も徐々に開発能力を備えつつあります。新型ウイルスの感染拡大により、ヘルスケア業界が官民一体となってワクチン開発を推進したことは、業界への注目を改めて高めるほか、企業業績への貢献も期待されます。中国のワクチンを巡る動きは、ワクチン普及による景気浮揚効果と合わせ、今後も株式市場のドライバーとなりそうです。

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【図表】[左図]新型ウイルスワクチンの累計接種回数、[右図]中国の株価指数推移(香港ドルベース)
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