足元で日米欧の長期金利が揃って低下傾向となる中、企業業績の回復・拡大期待などから欧米では株価が上昇し、先週は米S&P500指数や欧州のストックス・ヨーロッパ600指数などが最高値を更新しました。一方、日本株式はこのところ概ね横ばいとなっており、2019年末からの株価パフォーマンスを見ると、米国と比べ、日本の出遅れ感が目立ちます(左下グラフ)。
米国や欧州が先行し、日本などは出遅れていると言えば、新型コロナウイルスのワクチン接種が思い起こされます。日本では、大規模接種センターの開設や職域接種の開始などにより、普及の加速が期待されましたが、ここにきてワクチンの供給が追いつかなくなり、接種予約の一時中断など、混乱が生じています。そうした状況下、東京に4度目の緊急事態宣言が出されるなど、感染拡大への懸念が続いています。しかし、政府は、希望する全ての人への接種完了の時期について、9月末までに必要なワクチンを確保しているとして、10~11月の早い時期への前倒しを目指しています。
また、4-6月期の企業決算の発表が先週から米国で本格化したのに続き、今週は欧州でも始まるのに伴ない、業績見通しの上方修正期待が両地域で先行して高まっていることも、日本株式の出遅れ要因の1つと考えられます。ただし、業績見通しについては、悪化から改善への転換タイミングという点で、日本は米国に大きく遅れたものの、転換後の改善傾向に大差は無いようです(右下・上段グラフ)。そして、日本の場合、今後、ワクチン接種の普及に伴ない、行動制限の緩和・解除が進むことにより、景気・企業業績の回復ペースが速まると期待されます。
なお、今秋の自民党総裁の任期切れや衆議院議員選挙というイベントを前に、日本の政治の先行き不透明感を懸念する向きもあります。ただし、政権与党の自民党は、衆院選を前に新たな経済対策を打ち出す姿勢も見せており、これが実現する場合、株式市場で好感されることも考えられます。
足元の日米欧の予想PERを比べると、業績の上方修正期待の強さなどを反映し、米国では22倍台半ば、欧州でも17倍台半ばとなっています。一方、日本は15倍台半ばと、過去の平均並みの水準にとどまっており、米国や欧州と比べると相対的な割安感が見られます。日本を取り巻く前述のような状況や割安感などを踏まえると、今後、日本株式が出遅れ解消に向かうと期待されます。
![【図表】[左図]主要国・地域の株価の推移、[右図上]主要国・地域の予想EPSの推移、[右図下]TOPIXと予想PER(株価収益率)の推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1725.jpg)
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