IMF(国際通貨基金)は、7月27日に発表した最新の経済見通しで、世界の今年のGDP成長率を1980年以降で最も高い前年比+6.0%で維持、来年については0.5ポイント上方修正し、+4.9%としました。
今年の見通しが、世界全体では変更されなかったのは、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいるほか、継続的な財政支援が見込まれる先進国の見通しが上方修正となった一方、感染力の強い変異株が拡がる中、ワクチンの普及が遅れている新興国の見通しが下方修正となり、相殺された結果です。つまり、ワクチン普及の差が、目先の経済回復の行方を大きく左右するとみられます。
先進国の中では、ワクチン接種で先行する米国について、バイデン政権が目指す、インフラおよび社会関連の経済対策が議会を通過するとの想定で、今年の成長率予想が上方修正となっただけでなく、来年の見通しも大幅に引き上げられました。一方、日本については、相次ぐ緊急事態宣言などに伴ない、経済活動が制限されたことから、G7(先進7ヵ国)で唯一、今年の成長率見通しが下方修正されました。
新興国では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、インドやASEAN(東南アジア諸国連合)5ヵ国の見通しが大幅に下方修正されました。加えて、公共投資をはじめとする財政支援の減速を理由に、中国の見通しが下方修正されたこともあり、アジアが大きく足を引っ張る見通しとなっています。
なお、最近の物価上昇圧力の高まりについては、パンデミックに関連した異例の動きと、経済活動の再開に伴なう一時的な需給のミスマッチを反映したものであり、来年には先進国を中心に大半の国で落ち着くこととなり、パンデミック前の水準に戻ると予想されています。
IMFは、世界経済見通しには下振れリスクが引き続き大きいとしています。そして、ワクチン普及の遅れなどに伴ない、新たな変異株が出現し、経済活動の低迷につながる可能性に言及し、これを防ぐべく、世界全体でワクチン接種を公平に進めるための多国間行動が必要としています。また、米国の財政支出計画についても、議会で与野党の溝が深いことから、規模が縮小されるリスクを指摘しています。さらに、物価上昇率が高止まりする場合には、米国をはじめとする先進国の中央銀行が金融政策を見直す可能性があるとされています。
![【図表】[左図]IMFの世界経済見通し、[右図]先進国・新興国の実質GDP予測](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1726.jpg)
- 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。