29日に発表された、米国の4-6月期の実質GDP速報値は前期比年率+6.5%と、8%台との市場予想を下回ったものの、1-3月期の伸びを僅かに上回りました。また、名目GDPの規模は、大型の財政政策や積極的な金融緩和、ワクチン接種の普及などを背景に、コロナ禍前の2019年10-12月期の水準を回復するに至りました。

同国では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって起きた景気後退は、2020年4月までの僅か2ヵ月で終了したと判定されています。矢継ぎ早に財政政策が採られただけでなく、追加策が繰り返し導入されているほか、積極的な金融緩和の実施などにより、GDPの約7割を占める個人消費が景気回復の主な牽引役となっているほか、設備投資も堅調に推移しています。また、住宅投資も、物件不足による住宅価格の高騰などの影響で、この4-6月期こそマイナス成長となったものの、コロナ禍に伴なう住み替え需要の高まりや低金利などを背景に、今年1-3月期までは非常に高い伸びとなりました。このように、内需が堅調で、輸入が増加した一方、海外景気の回復が米国より遅いことなどから、外需が冴えないため、純輸出は米景気回復の足をやや引っ張っている状況です。

今後は、行動制限時の消費抑制や、経済対策による現金給付などを背景に積み上がった家計の貯蓄の切り崩しが個人消費を支えると見込まれます。そして、経済活動の再開が進むに連れ、消費の対象は巣ごもり需要の恩恵を享受してきたモノから、サービスへとシフトするとみられるほか、いわゆるリベンジ消費が見込まれることなどもあり、個人消費が引き続き景気回復の牽引役となる見通しです。また、バイデン政権が掲げる、インフラ投資を中心とした「米国雇用計画」や、教育・子育て支援などからなる「米国家族計画」の2つの経済対策の成立も見込まれ、景気回復を支えることでしょう。

一方、GDPの回復に比べ、労働市場の回復は遅れています。その背景として、経済対策による特別加算で失業保険が手厚くなり、就労意欲の低下につながったことが挙げられます。また、学校閉鎖やオンライン授業などに伴ない、子供の面倒を見る必要が生じ、子育て世代の労働復帰に影響がおよんでいるという事情もあります。しかし、今年9月までの失業保険の特別加算を前倒しで終了する州が増えているほか、通学の再開が進むに連れ、労働市場の回復が加速すると期待されています。

そして、労働市場の回復が進めば、足元で企業の景況感を抑える要因となっている人手不足の緩和・解消を通じて、供給不足や物価上昇の加速といった問題の緩和・解消にもつながると見込まれます。つまり、労働市場の回復が本格化すれば、米国経済の更なる回復・拡大の可能性がより高まると考えられます。

【図表】[左図]米国のGDP主要項目の推移 、[右図]米国の名目GDP規模と雇用者総数の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。