2020年、コロナ禍で多くの国が導入した外出制限措置などにより非接触ニーズが高まり、オンラインでのコト消費(サービスなどで得られる価値の消費)が増えました。一方、コロナ禍が収束すれば縮小するのでは、との声も聞かれます。しかし、消費者は利便性を体験し、供給側もサービスを充実させている事実に鑑みると、オンラインでのコト消費ビジネスは定着する可能性が高いと考えられます。

以前の日常生活には戻れない
買い物はEC(電子取引)、決済は電子マネー、食事はデリバリー、仕事はテレワーク・・・、この1年で日常生活が一変しました。オンラインでのコト消費では、たとえば、誰にも邪魔されない場所で好きな時間に迫力ある映像などを楽しむ人が増えました。しかも、技術の進歩で通信速度が速くなり、鮮明な画像や豊富なコンテンツなども提供され、利便性と快適性を体験しました。

一方、外出する機会が減ったことで体力の低下やメンタルヘルスといった健康面に気を配る人が増えました。しかし、日本の大手スポーツクラブが今年だけで全店舗の約15%を閉店するほどに、施設利用者の足が遠のきました。

代わって利用されたのが、オンラインフィットネスです。自宅でも充実したサービスを受けることができ、熱狂的なファンがいるケースもあるようです。

自宅がフィットネスクラブに大変身
ここでは、米国で人気のオンラインフィットネスサービスを提供する、2012年創業の「Peloton Interactive」を紹介します。

同社は、トレーニングマシンの販売とサブスクリプション(継続課金)を掛け合わせたビジネスモデルで急成長しました。その源泉は、マシンからBGM、映像、アパレルまで、すべてを自社開発し、自転車やヨガなどの12講座毎にレベル分けしたクラスを設け、専属カリスマインストラクターがユーザーを鼓舞することで没入感を高めたことにあります。会員制度には、アプリからコンテンツを視聴して参加する会員と、バイクやトレッドミルなどを購入してライブ・オンデマンド方式で参加し、他のユーザーと対話もできる会員の2種類が用意されています。

また、音楽配信やフィットネス機器、AI(人工知能)コーチング機能を備えたワークアウトマット、運動の質を正確に記録するウェアラブルセンサーなどを手掛ける企業を次々と傘下に収めることにより、サービス向上・拡充を図っています。このような取り組みでユーザーのモチベーションを高めた結果、全体のワークアウト数を伸ばし、月平均0.31%(21年1-3月期)という低解約率を実現しています。

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コロナ禍をきっかけに、オンラインでのコト消費を体験した消費者が一気に増え、使い勝手の良さが広く知れ渡りました。コロナ禍が収束した後も、リアルとオンラインの共存がスタンダードになっていくと考えられます。

【図表】[左図]世界のデジタルフィットネス市場の規模、[右図]Peloton会員のワークアウト数の推移
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