米国では8月18日、FRB(連邦準備制度理事会)が7月のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事要旨を公表しました。それによると、量的緩和の縮小、いわゆるテーパリングについて、ほとんどの参加者が、経済の回復が予想どおり進展すれば、年内の開始が妥当と考えている一方、2022年初めの開始が妥当とみているのは一部に限られているとのことです。市場では従来、今年12月のFOMCでテーパリングが決定され、来年1月に開始されるとの見方が有力でしたが、今回の議事要旨の公表を受け、年内開始の可能性が織り込まれ始めました。

同議事要旨の公表を受け、18日に米国株式は下落したものの、主要株価指数の騰落率は前日比▲1%前後にとどまりました。また、米国債の利回りや米ドルは小動きとなりました。こうした背景には、7月のFOMC以降、FRB関係者からテーパリングの早期開始に前向きな発言が目立ったためと考えられます。なお、19日のアジアや欧州でも、総じて株安となり、下落率が米国を上回った市場も少なくありませんでしたが、中国での規制強化の動きへの警戒感が強まった影響などと考えられます。

下の左表のとおり、FOMCは年内にあと3回予定されています。9月3日に発表となる8月の雇用者数が高水準となれば、9月のFOMCでテーパリングが決定される可能性もあります。ただし、7月のFOMCの声明文には、テーパリングについて、「今後複数の会合で議論する」と記されています。また、同会合の後、ワクチン接種ペースの鈍化や変異株の感染拡大などに伴ない、ミシガン大学消費者信頼感指数、ニューヨーク連銀製造業景気指数が大幅に下振れするなど、軟調な経済指標が目立っていることなども踏まえると、テーパリングの決定は早くて11月のFOMCとなる可能性が高いと考えられます。

いずれにしても、テーパリングが年内に決定・開始となる場合、市場で再度、一時的な動揺が見られる可能性は否定できません。しかし、早期に開始となる分、資産買入れ縮小ペースが緩やかとなれば、金融環境が過度に引き締められるリスクは抑えられると期待されます。

なお、変異株の感染拡大に伴ない、複数の米金融機関などが出社再開の時期の先延ばしに動いていると報じられています。今後、学校の再開も含め、経済活動再開の先送りが拡がるような場合、労働市場の回復の遅れ、ひいてはテーパリング決定の先送りにつながる可能性も考えられます。そうした状況にあるだけに、8月下旬のジャクソンホール会議では、パウエルFRB議長が27日の講演でテーパリングの早期開始の可能性を示唆することはあり得るとしても、踏み込んだ発言までは行なわないと考えられます。

【図表】[左図]FOMCなどの年内の主な予定、[右図]前回の金融政策正常化の歩み
  • 上記は過去のものおよび予定であり、将来を約束するものではありません。