低金利が続くなか、国債や普通社債に比べて相対的に利回りが高い劣後債は、投資家からの高いニーズが続いています。今年、大手海運会社が同社初となる劣後債を発行し、その購入申込み倍率が11倍を超えるなど、投資家からの需要の高さがうかがえます。
普通社債よりも法的弁済順位が低い劣後債は、その分、格付が低くなり利回りが高くなります。とはいえ、足元において、国内の発行体の顔ぶれは日本を代表するような企業ばかりで、その多くの格付は投資適格級であり、デフォルト・リスクが相対的に低い企業がほとんどです。また劣後債には通常、繰上償還条項が付与されており、予定された繰上償還日に償還されない(コール・スキップ)場合、債券価格が大きく値下がりする可能性があります。日本の発行体は、コール・スキップすることで起こるデメリット(投資家からの信頼の低下や今後の起債条件の悪化などにより、資金調達が困難になるなど)に鑑みてコール・スキップを行なわず、予定どおり繰上償還することが慣例となっています。欧州の発行体では、市場環境や企業経営における合理的な判断からコール・スキップを実施する場合もみられ、それに比べると日本の発行体のコール・スキップ・リスクは相対的に低いとみられます。
供給サイドに目を向けても、劣後債の起債は堅調で、特に金融機関以外の事業会社による起債が活発化しています。以前は、日本の劣後債の発行体といえば、国際的な規制(バーゼル規制やソルベンシー規制)上の自己資本の調達手段として活用する金融機関が大半でした。しかし近年では、事業会社による起債が増えています。普通社債で資金調達を行なう場合、自己資本比率は低下します。また、株式で資金調達した場合は、ROE(自己資本利益率)を低下させる可能性があります。一方、負債と資本の中間的な特性をもつ劣後債は、発行体にとって資金調達額の50%程度が負債ではなく資本と認められるので、負債を増やしたくない企業にとって、有効な資金調達手段といえます。投資家の需要の高さも手伝って、各発行体の資本増強策の選択肢のひとつとして、劣後債による資金調達が増えているようです。
投資家・発行体ともに注目度が高まっている劣後債ですが、普通社債に比べてリスクが相対的に高いこともあり、様々な業種の銘柄に分散するなど、リスク低減を図りながら投資することが重要です。資産運用においては、複数の銘柄に分散投資を行なう投資信託の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
![【図表】[左図]日本企業の劣後債(円建て)の発行額の推移、[右図]今年の日本企業*の劣後債(円建て)発行事例](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1735.jpg)
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