新型コロナウイルス感染拡大の抑制をめざして行なわれた行動制限により、3密(密閉・密集・密接)の回避が難しいとされた娯楽は大幅に抑制されました。

日本レコード協会の調査*によると、2020年の国内における音楽への支出金額の平均値は、前年比約▲38%の5,842円と大きく落ち込みました。
一般社団法人 日本レコード協会「音楽メディアユーザー実態調査」

とりわけ、コンサート、ライブなどの入場料、音楽関係グッズ・出版物、カラオケへの支出が減少しました。一方で、有料型配信ライブや定額制動画配信サービスへの支出が増えました。また、楽曲購入が減った理由では、「音楽配信サイトやアプリで満足できるようになった」が、「金銭的な余裕の減少」を上回り第1位となりました。

まさにコロナ禍での行動の変化を物語る結果となっており、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が急速に進んだ流れから、新たなサービスが広まった印象を受けます。

【実は既に世界の潮流はストリーミング】
世界に目を向けると、音楽売上金額の推移(下図)は、2014年あたりを底に回復傾向を見せており、2020年も増加しました。

その内訳からは、CDやDVDといったパッケージ売上が継続して下落する一方、ダウンロードやストリーミングといったデジタルデータの売上が大きく伸びていることが分かります。また、近年は、データを所有するダウンロードに代わり、データをリアルに再生するストリーミングの売上が、音楽配信の世界的な潮流となっていることが分かります。

【音楽産業でも進むDX】
このように、音楽の楽しみ方は、CDやDVDなどの購入やレンタルから、より手軽なデジタルデータによる機器再生を経て、好きな時間にインターネットなど介し、スマートフォンやタブレットなどで再生する方法に変化しています。

この変化には音声などのデジタル化技術の進展やネットワークの拡充といったインフラ面の充実に加え、配信事業者がユーザーの利用状況をもとに、AI(人工知能)などを活用して「おすすめ」を提供するなどのサービス面の充実も貢献していると考えられます。また、一部の配信事業者は楽曲の提供者に対し、多くのユーザーの利用状況を分析して得た「今の音楽の流行要素」を提供するなど、音楽配信を巡るDXは進化を続けています。

これからも、DXがもたらす便利なサービスは、それがなかった時代が想像できないような、身近で手放せないものとなっていくでしょう。

【図表】世界の音楽売上金額の推移(単位:億米ドル)
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません