8月の金融市場では、世界各国で新型コロナウイルス変異株の感染拡大による影響が懸念される局面があったものの、主要国の堅調な経済指標の発表や、米議会上院で総額1兆米ドル規模のインフラ投資法案が可決され、下院でも9月27日までに採決される見通しとなったことなどが好感され、米国や欧州の主要株価指数が最高値を更新するなど、月の前半は株高の傾向が続きました。中旬以降には、アフガン情勢や中国における規制強化の動きなどに対する懸念が高まり、株価が下落する局面があったものの、世界景気の回復期待や、米国の早期利上げ懸念の後退などを背景に、株価は堅調に推移しました。

米国の金融政策を巡る動向に注目
市場では、引き続きFRB(米連邦準備制度理事会)による金融政策の動向が注目されています。8月に公表された7月のFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨では、多くの参加者が年内のテーパリング(量的緩和の縮小)開始が適当と判断していることが示されました。パウエルFRB議長は、テーパリング開始を急がない姿勢を示していますが、9月3日公表の雇用統計で労働市場の回復が確認された場合、21~22日に開催されるFOMCにおいて、テーパリング開始時期に関するメッセージが発せられる可能性があります。

また、パウエル議長が2022年2月に任期満了を迎えることに伴ない、バイデン政権は9月中にも次期議長の指名候補者を固める見通しです。世界の金融政策に大きな影響力をもつ議長の人事は、市場で注目を集めています。

日本・ドイツでの重要な政治イベント
日本では、菅首相が来週前半にも党役員人事を行なう方針で、その後、衆院選について結論を出す見通しです。なお、自民党総裁選(17日告示、29日投開票)が予定されていますが、中旬の衆院解散も選択肢とされ、その場合には総裁選が衆院選後に先送りされる可能性もあります。

ドイツでは、9月26日に連邦議会選挙が行なわれます。4期(16年)を務めたメルケル首相は今回の選挙には出馬せず、引退することを表明しています。政権樹立には複数党での連立が必要になるとみられており、首相交代によって政策運営の方針などに変化が生じる場合、欧州経済にも大きな影響を及ぼす可能性もあることから、選挙の動向に対する市場の関心は高まっています。

米国では、3回目のワクチン接種を実施予定
新型コロナウイルス向けワクチン接種の拡がりに伴ない、欧米を中心に経済活動を再開する動きが進んできましたが、足元では、変異株の出現によって、再び感染者数が増加傾向となるなど、企業の景況感や消費者心理改善の足かせとなっています。こうした中、米国では、9月下旬から3回目のワクチン接種(ブースター接種)開始をめざす動きが進んでおり、感染拡大の抑制と経済活動の正常化の両立が実現できるか、同国の動向に注目が集まっています。

【図表】9月の注目される金融政策および政治・経済イベント
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。スケジュールは予告なしに変更される可能性があります。
  • 上記は過去のものおよび予定であり、将来を約束するものではありません。