2022年4月4日、東京証券取引所(東証)の「第1部、第2部、マザーズ、ジャスダック」の4つの市場が廃止され、「プライム、スタンダード、グロース」の3つの市場に再編されます。

これまで東証の市場区分については、コンセプトの曖昧さが指摘されてきましたが、今回の再編で、各市場区分のコンセプトが明確化されます。「プライム」は、グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場に、「スタンダード」は、公開された市場における投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業向けの市場に、そして「グロース」は、高い成長可能性を有する企業向けの市場とされています。

新しい市場区分のうち最も注目されているのはプライムで、企業に変革や成長を促し海外から多くの投資資金を呼び込むことを目的に、ESG(環境・社会・企業統治)に関する開示が強化されるほか、現在の第1部より上場基準が厳しくなります。プライム市場の上場基準としては、銀行や取引先と持ち合う政策保有株を除いた流通株式の比率が35%以上、時価総額100億円以上などと定められました。この基準を基に、今年7月、東証は新市場の適合状況について1次判定を企業へ通知しており、第1部上場2,191社のうち、6月末時点でプライム市場の基準を満たしたのは、約7割の1,527社となりました。

一方、基準に届かなかったのは664社で、その多くは、流通株式の時価総額や比率の基準に抵触したことが要因だったようです。今回、基準に届かなかった企業についても、改善に向けた報告書を開示すれば、当面プライム市場に残ることが出来ます。ただし、こうした場合には、進捗状況の報告を通じ、政策保有株の削減など株式の流動性を高めることが求められます。基準を満たせないままでは、個人投資家などから敬遠される可能性があるほか、事業の取引面などでの影響も懸念されていることから、多くの企業が基準のクリアを目指すとみられます。

今後については、12月末までに、企業自身が上場市場を選び申請し、来年1月11日には東証により各企業が所属する市場が公表される予定です。足元では、市場再編に対処するため自社株消却や大株主による株式売却の動きがみられるなど、資本政策を打ち出す企業が増加しています。このような動きや、今後の企業価値向上に対する企業の取り組みが株価へ影響するとみられ、各企業の資本政策や所属市場に注目が集まっています。

なお、市場再編と同時に行なわれるTOPIX(東証株価指数)の改革では、2022年4月1日時点の構成銘柄が、新市場区分施行後も選択市場に関わらず継続採用されます。ただし、第1部からプライム市場に移行する銘柄であっても、流通株式時価総額100億円未満の銘柄については、2022年10月末以降、段階的に構成比率が低減され、2025年1月の最終営業日に除外される予定です。

【図表】新市場各区分における上場基準の概要
  • 新規上場基準と上場維持基準が異なる項目のみ、上段は新規上場基準、()は上場維持基準
  • (東京証券取引所の発表資料などをもとに日興アセットマネジメントが作成)