2030年のカーボンピークアウトと2060年のカーボンニュートラル、いわゆる「3060目標」を掲げる中国では、EV(電気自動車)をはじめとする新エネルギー車(以下、新エネ車)の販売が好調です。昨年から続く世界的な半導体不足の影響により、年初は一時的に落ち込んだものの、足元で自動車全体の販売が減少傾向となる一方で、新エネ車の販売台数は大幅に増加しています。こうした中、EVの普及に伴なって、車載用電池の需要も急拡大しており、今年1-6月のEV用電池の装備量は前年比+200%を達成しました。

中国は車載用の主力電源である、リチウムイオン電池の世界最大の製造拠点です。その生産能力は世界の77%(2020年時点)に及ぶほか、サプライチェーンの主要工程においても圧倒的なシェアを保持していることなどから、中国のリチウムイオン電池は高い価格競争力を有しています。加えて、近年は技術的にも格段の進歩を遂げており、その品質は先進国に引けを取らない水準となっています。足元では次世代電池の開発も活発化しており、ナトリウムイオン電池の実用化に向けた動きが進むほか、各国で開発競争が繰り広げられている全固体電池の分野でも、中国企業の特許出願件数は先行する日本勢を猛追しています。

中国が車載用電池市場で躍進した背景には、政府による大規模な育成強化策があります。ガソリン車からEVへのシフトが“国策”として進められる中、基幹部品である車載用電池分野にも巨額の産業補助金が投入され、中国には多くの電池メーカーが誕生しました。近年は技術力や生産能力に優れた大手が突出する形で業界の集約化が進んでおり、世界市場での存在感を高めています。例えば最大手のCATL(寧徳時代新能源科技)は、創業からわずか6年後の2017年に車載用リチウムイオン電池の出荷量でパナソニックを抜いて世界首位の座を獲得しました。また、EV大手で、半導体や電池の製造にも携わるBYD(比亜迪)は、年内にも車載用電池の外販を開始するとしており、更なる成長が期待されています。

昨年11月に発表された中国の「新エネ車産業発展計画」では、2025年までに新車販売台数に占める新エネ車の比率を20%程度に引き上げ、2035年までにEVを新車販売の主流にするという目標が設定されました。これを受けて、中国の新エネ車販売台数は、2025年には、2020年の4倍を超える420万台に達するとの見通しも出されています。また、今年6月には、第14次5ヵ年計画(2021-25年)期間中に新エネルギーの充電や電池交換などのインフラ整備を推進するとの方針が示されるなど、車載用電池業界に対する政策面での後押しもみられます。こうしたことから、引き続き、中国の車載用電池市場の拡大が期待されます。

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【図表】[左図]中国の自動車販売台数の推移、[右図]EV用リチウムイオン電池の地域別需要予測
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