半導体不足による自動車やその他の産業への影響拡大が懸念されるなか、改めて、半導体の重要性が認識されています。
■需給改善に向け、各社は生産体制強化の動き
半導体は、家電製品や電子機器など、幅広い製品に搭載される部品で、需要の約半数をスマートフォンやパソコン関連が占めています(図①)。足元の半導体不足の背景には、コロナ禍で、パソコンや通信などの需要が急増したことに加え、工場の操業停止や物流停滞などにより供給が困難となったこと、米中貿易摩擦の影響などがあります。また、自動車は「走る半導体」といわれるほど様々な種類の半導体を多く搭載しており、コロナショック以降に自動車需要の回復が想定よりも早まったことも、半導体の需給ひっ迫に拍車をかけました。
こうした状況を受け、半導体製造各社は大規模な設備投資を相次いで打ち出しており、製造能力の強化だけでなく、供給拠点の分散なども進めることで、供給体制の再構築を図ろうとしています。
■デジタル化、脱炭素化が需要を押し上げ
半導体の需要拡大は、コロナ禍による一過性のものではなく、根底には、従来からの世界的なデジタル化という流れがあります。
半導体の用途別見通しを見ると(図①)、パソコン向け需要の伸びは小幅にとどまる一方、近年進むデジタル化やIoT(モノのインターネット)化の流れを受け、データセンター向け需要の伸びが見込まれるほか、EV(電気自動車)普及に伴なう自動車向け需要も増加の見通しです。これらには、省エネ化・省電力化に大きく貢献するとされるパワー半導体が不可欠であり、脱炭素化の流れが強まる中、半導体需要の拡大ペースのさらなる加速も見込まれます。
半導体の需要については、これまで数年単位で拡大・縮小を繰り返す「シリコンサイクル」が指摘されてきました。しかし、半導体用途の多様化を受けて、近年の拡大ペースは加速傾向にあり(図②)、2030年の市場規模は100兆円との試算もあります。
■デジタル社会を支える国家の大黒柱の1つ
このように、デジタル化、脱炭素化に伴ない、産業や社会を支える上で半導体の重要性が増すなか、主要国・地域の政府は、半導体の生産・供給能力の強化に向けた支援に動き出しています。
例えば、米国は、半導体不足の緩和に向けて520億米ドル(約5.7兆円)規模の投資を掲げるほか、欧州も総額1,350億ユーロ(約18兆円)のデジタル戦略を打ち出し、生産能力の拡大を進めています。中国や台湾なども、数兆円規模の半導体産業支援策を進めており、日本も、デジタル社会を支える国家の大黒柱の一つと位置づけ、「半導体・デジタル産業戦略」を通じて半導体産業の活性化を進めています。
半導体は、表からは見えない存在でありながら、様々な分野で屋台骨として存在感をますます高めています。各分野の先行きを見通す際には、半導体分野の生産・供給や技術革新などの状況を押さえることも重要と考えられます。
![【図表】[左図①]【半導体部品の主な用途別市場規模】、[右図②]【世界の半導体市場の規模】(1995年~2022年予想)](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1747.jpg)
- 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。