脱炭素社会の実現に向けて、米国が2030年までに新車販売の50%を電動車にすることをめざすとしたほか、日本は2035年までに乗用車の新車販売の全てをEV(電気自動車)などの電動車にすることを表明するなど、ガソリン車からEVへの移行機運が高まっています。こうした中で関心を集めているのが、EV普及のカギを握るとされる次世代の蓄電池“全固体電池”です。

全固体電池とは
私たちの身の回りには、EVだけでなく、スマートフォンやパソコンなど電池で動くものが数多くあります。それらに使用される電池の主流はリチウムイオン電池ですが、それに代わる電池として期待されるのが、全固体電池です。リチウムイオン電池はその電池の中に含まれる電気を貯めたり放出したりするための電解質が液体である一方、全固体電池では固体となっています。

EV普及の後押しが期待される全固体電池
脱炭素社会の実現に向けた動きが活発化することで、今後、世界のEV販売台数は大幅な増加が見込まれます。しかし、現在のEVに使用されるリチウムイオン電池は安全性や航続距離、1回あたりの充電時間などに課題があると言われています。一方、全固体電池は、リチウムイオン電池と比較して、発火リスクが低いことから安全性が高いとされています。さらに、より小さな電池でより大きな電力を蓄えられることを示すエネルギー密度は3倍程度であるほか、充電に要する時間は3分の1程度に短縮されることなどから、EV普及を後押しする電池として期待されています。

国内外で実用化に向けた競争が加速
こうした中、全固体電池の実用化に向けて、国内外で競争が加速しています。例えば、国内では、電池技術の特許出願件数(2000年~2018年までの累計)が世界第4位となったトヨタ自動車が2020年代前半、そして、日産自動車は2020年代後半の実用化をめざしています。また、国外では、独フォルクスワーゲンが、電池開発の新興企業である米クアンタムスケープと開発に乗り出したほか、電池などに関する高度な技術を持つ大学なども研究を進めるなど、各国の自動車メーカーなどが積極的な姿勢を示しています。

全固体電池の量産化技術の確立や製造コストの削減などにはまだ時間を要するとの見方もあります。しかし、企業間の競争が様々な課題の克服を促すこととなれば、全固体電池の早期実用化に繋がり、EV市場の更なる発展に寄与することが期待されます。

【図表】[左図]世界のEV販売台数推移、[右図]主な企業による全固体電池の開発動向
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