株式市場が大きく下落
中国の不動産開発大手「中国恒大集団(エバーグランデ)」が巨額の債務を抱え経営難に陥っていることから、同社が発行する債券のデフォルトリスクが意識されるとともに、金融商品の支払いに困難が生じているとの報道を受け、市場が動揺しています。9月20日の株式市場では、香港のみならず欧米においても投資家のリスク回避姿勢が高まる状況がみられました。

足元で何が起きているのか?
中国では、景気対策として実施されてきた金融緩和などを背景に、一部都市において不動産バブルが懸念される状況がみられます。これを受け、中国政府は昨年8月、不動産業界に対し、「3つのレッドライン」を示し、財務改善を求めてきました。中国恒大集団の経営難は、中国の不動産業界の環境が再度引き締まる中で、高レバレッジ経営からの転換が間に合わず、資金繰りが悪化したことによると考えられます。市場では、同社の負債総額が約33兆円と巨額であるため、仮にその処理に失敗した場合、中国経済や金融システムに大きな打撃を与えるとの見方が拡がりました。

「中国恒大集団」は異質な存在
もともと、中国恒大集団は、大規模な都市開発プロジェクトを手掛ける一方、少ない資本で借金を膨らませる高レバレッジ経営を特徴とした、極めてアグレッシブな不動産大手として知られていました。同社以外にも高レバレッジの不動産会社は存在していたものの、これらの会社が、中国政府が主導する負債削減の流れの中で、事業を縮小したり、低レバレッジに舵を切る一方、同社は強気な路線を続けていました。今回の信用不安を受けて、海外市場では急速に懸念が拡がっていますが、中国本土市場では今回の件は不動産業界全体の問題ではなく中国恒大集団というアグレッシブな体質の会社が招いた、個別の流動性危機に過ぎない、とみる見方が目立ちます。また、同社の債務についても規模の大きさが目立ちますが、既に銀行など金融システムへのエクスポージャーは絞られている上、多くが不動産業界のサプライヤーに対するものであることから、問題が生じたとしてもリーマン・ショックのように経済全体に打撃を与えるものにはならないとみられています。

今後どうなるのか?
今後については、中国恒大集団の問題がどのように解決されるのかが注目されます。単独での解決が難しい場合、鍵となるのは中国政府の対応ですが、同社の過去の経緯から、安易な救済は考えにくく、最終的解決に至るまでに、金融市場で不安感が高まることも想定されます。他方で、そもそも現在の不動産業界が直面する環境をコントロールしているのは中国政府であり、また年央より景気下押し懸念に対する対応を強化しつつある中国政府が経済全体へのリスクを座視するとは考えにくいことを考えると、問題が中国恒大集団を超えて広がる場合には、速やかな対応が取られるだろう、との声は少なくありません。本件に対する中国本土市場の反応が相対的にマイルドに留まってきたのは、このような中国政府への信頼感が海外市場に比べて強い点が指摘できます。今後の市場の見方を知る上では、中国本土市場の動向にも注目する必要があります。

【図表】主要株価指数の推移(現地通貨ベース)
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