米国では、FRB(連邦準備制度理事会)が9月21~22日にFOMC(連邦公開市場委員会)を開催しました。今回も現行政策の維持が決定されたものの、会合後の声明やパウエル議長の会見では、次回11月の会合で量的緩和の縮小、いわゆるテーパリングの開始を決定する可能性が示唆されました。また、会合参加者の見通し(中央値、左下の表を参照)では、利上げの開始時期が2023年から22年に前倒しとなりました。ただし、22日の株価は上昇し、長期国債の利回りは低下しました。
会合参加者の見通しでは、今年のGDP成長率が下方修正されました。しかし、これは足元での新型コロナウイルス変異株の感染拡大に伴なう個人消費の鈍化や、世界的な半導体不足などの短期的な供給制約が産業活動の足かせとなっていることなどを反映したもので、22年、23年の見通しは上方修正されました。
物価上昇率については、短期的な供給制約が予想より長引いていることなどから、今年の見通しが3.7%に上方修正されました。また、22年以降についても、2%台前半で鈍化傾向となる見通しながら、従来予想から僅かに上方修正されました。
そして、政策金利については、前述のとおり、利上げ開始が見込まれている22年に続き、23年、24年にそれぞれ3回の利上げが予想されています。
なお、パウエル議長はFOMC後の会見で、テーパリングに関して、まだ何の決定も下していないものの、会合参加者はテーパリングを22年半ばに終えるのが適切とみていると明かしました。
22年の利上げ開始見通しおよびパウエル議長が言及したテーパリングのペースは、世界金融危機後の金融政策正常化時の歩みや従来の市場の想定と比べてやや速いとみられ、市場では今回のFOMCの内容を「タカ派」的と評する向きもあります。それでも、22日の市場が落ち着いた動きとなった背景の一つとして、パウエル議長が、テーパリングの開始やペースは利上げ時期の直接的なシグナルではないと説明し、利上げに慎重に臨む姿勢を改めて強調したことが挙げられます。さらに、同議長は、FOMCの見通しは決定や計画ではなく、あらゆる予測より重要なのは、最大雇用と物価安定の目標を達成するまで、金融政策は極めて緩和的であり続けるという事実だとも述べました。
テーパリングやその先の利上げが話題になると、市場では政策懸念が拡がりがちです。しかし、超緩和的な金融政策からの出口戦略が進められる間、アクセルを踏むFRBの足の力は徐々に緩められるものの、足が外されるわけではありません。ましてや、ブレーキが踏み込まれるような引き締め局面ではなく、過度の懸念は不要と考えられます。
![【図表】[左図上]FOMCなどの年内の主な予定、[左図下]FOMC参加者の見通し(中央値)、[右図]前回の金融政策正常化の歩み](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1752.jpg)
- 上記は過去のものおよび予定、見通しであり、将来を約束するものではありません。