予想外の利下げ決定を受け、リラは安値を更新
トルコ中央銀行は、9月23日に開催した金融政策決定会合で、2020年5月以来1年4ヵ月ぶりとなる利下げを決め、主要政策金利の1週間物レポ金利を従来の19%から18%へ引き下げることとしました。市場では、政策金利は据え置きとの見方が大勢を占めていたため、通貨リラは予想外の決定を受けて売られ、対米ドルで最安値を更新しました。
インフレが加速する中、8月までは金利据え置き
トルコでは今年3月、インフレの加速を抑えるべく、中央銀行が大幅利上げ(17%→19%)を決定しました。しかし、その数日後には、高金利がインフレの原因だと主張するエルドアン大統領が、2年弱で3度目となる中央銀行総裁の更迭に踏み切り、同大統領率いる与党・AKP(公正発展党)の元議員、カブジュオール氏が後任の総裁に就任しました。なお、同氏は金融緩和を志向する大統領に近い見解を持つとみられているものの、その後、インフレ率が一段と高まったことなどから、8月までの5回の金融政策決定会合では、政策金利は据え置かれてきました。
インフレ率は一段と加速も、中銀は利下げに転換
ところが、9月3日に発表された8月の消費者物価指数が前年同月比+19.25%と、政策金利を上回る水準まで上昇すると、カブジュオール総裁は9月8日、新型コロナウイルスの感染拡大という特殊な状況下で、価格変動が激しい食品やエネルギーなどを除いたコア消費者物価指数の重要性が増したとして、同指数を重視する方針を明らかにしました。それに続き、今回の金融政策決定会合では、利下げ決定の背景の1つとして、最近のインフレ率の昂進は経済活動の再開などに伴なう一時的なものとの判断が示されました。さらには、これまでフォワードガイダンス(政策の指針)として掲げられてきた、「インフレ率を上回る水準に政策金利を維持する」との文言が今回、会合後の声明から削除されました。9月にトルコ中央銀行が示した一連の動きは、景気を重視し、利下げを主張するエルドアン大統領におもねるものだとの見方が拡がっています。
国内事情だけでなく、国際情勢もリラ安要因に
上記のような状況を踏まえると、トルコでは今後、追加利下げが行なわれる可能性が高いと考えられます。一方で、米国では量的緩和の縮小、いわゆるテーパリングの開始が早ければ11月にも決定される可能性があるほか、2022年には利上げが予想されています。また、トルコ以外の新興国では、物価上昇が拡がっていることもあり、利上げを進める国が目立つようになっています。こうした環境下で、トルコ中央銀行が拙速な利下げを繰り返すようなことがあれば、リラ安の加速や、ひいてはインフレ率の押し上げにもつながりかねないだけに、今後の同中央銀行の動きに注意が必要です。
![【図表】[左図]トルコ・リラの推移、[右図]トルコの物価および主要政策金利の推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1753.jpg)
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