株価上昇は一服、通貨レアルは冴えない展開
ブラジルでは今年、主要な輸出品である原油や鉄鉱石の市況回復などを背景に、6月初旬までは株価が上昇傾向となりました。しかし、足元では、鉄鉱石の価格や株価は軟調です。また、通貨レアルは、インフレ抑制などに向けて中央銀行が利上げを繰り返しているものの、冴えない状況です。

景気の持ち直しの勢いは今後、鈍化傾向に
同国では、新型コロナウイルスの影響などから、景気が昨年4-6月期に記録的な落ち込みとなりました。その後、低所得層への現金給付などの経済対策や、外需の回復および商品市況の反発などを背景に、景気は徐々に持ち直しに向かいました。しかし、足元では、原油価格は堅調なものの、中国が鉄鋼生産を抑えているほか、中国景気の先行きが怪しくなっていることもあり、鉄鉱石の市況は調整色を強めています。その中国は、ブラジルの主要な輸出先です。また、ブラジル国内では、高い失業率や高インフレに伴なう個人消費の低迷、金利上昇による投資鈍化が見込まれており、景気は今後、鈍化に向かうとみられています。

高インフレが続き、追加利上げは必至の情勢
通貨安に伴なう輸入品の価格上昇に加え、異常気象に伴なう水不足を背景とした穀物価格や電力料金の上昇などもあり、ブラジルの物価上昇率は昨年後半以降、高まる一方で、消費者物価指数は今年8月に前年同月比+9.68%と、5年半ぶりの高い伸びとなりました。こうした中、中央銀行は3月から9月にかけて利上げを繰り返し、政策金利を2%から6.25%へ引き上げました。物価の伸びは今後、徐々に鈍化する見通しながら、中央銀行の目標レンジを上回り続けるため、追加利上げは必至とみられています。

来年10月に大統領選を控え、政治面での懸念も
加えて、来年10月に大統領選挙を控えるブラジルでは、政治も懸念材料となっています。再選を目指すボルソナロ大統領は、新型コロナウイルスへの対応を軽視しただけでなく、ワクチン調達を巡る汚職疑惑への関与を指摘されたことなどもあり、国民の支持離れが進みました。一方、多くの人々を貧困から救ったとしていまだに人気が高い、ルラ元大統領が出馬の構えを見せており、世論調査の支持率では同氏がボルソナロ氏を上回っています。こうした中、ボルソナロ氏は、来年の大統領選挙に敗れるようなことになっても、敗北を受け入れない可能性を示唆するなど、言動が激しさを増しています。元軍人で、軍内部で広く支持されている同氏が、来年の選挙で敗れた場合でも、不正があったと主張し、軍の兵士や軍警察を味方につけた政治暴動につながるリスクを指摘する向きもあります。また、ルラ氏が大統領に返り咲く場合、構造改革路線が頓挫する可能性だけでなく、大衆迎合主義に逆戻りし、財政が一段と悪化する可能性もあることなどから、今後の成り行きが注目されます。

【図表】[左図]ブラジル・レアルと株価の推移、[右図]ブラジルの主要指標の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。