世界的な利上げへの動きやインフレ懸念などを背景に、足元で、主要国に対する円安が加速しています。米ドル(対円)は、9月下旬の109円台からわずか1ヵ月足らずで、2018年以来となる114円台まで円安が加速したほか、対オセアニア通貨やイギリスポンドでも円安が進行するなど、円は独歩安の様相となっています。
主要先進国で、利上げへの動きが加速
先進国では、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展によって景気回復が進む一方、供給制約に伴なう原材料不足や資源価格の上昇なども背景に、今年春ごろからインフレ懸念が強まっており、各国・地域の金融政策動向が注目されてきました。
こうしたなか、米国で9月下旬に開かれたFOMC(連邦公開市場委員会)では、量的緩和縮小(テーパリング)開始時期を11月に決定する可能性が示されるとともに、FOMC参加者見通しを受け、利上げ開始時期が2022年に前倒しされるとの観測が強まりました。また、経済再開や物価上昇などを背景に、英国で利上げ姿勢が示されたことやノルウェーでの約2年ぶりの利上げ実施、さらに今月には、住宅価格が高騰するニュージーランドでも利上げが実施されるなどの動きが相次いだことから、世界的な金利上昇につながりました。
特に足元では、英国中銀総裁がインフレ圧力抑制のために行動が必要と発言したことを受け、利上げ観測が強まったことや、原油価格が2014年以来となる1バレル=80米ドルを突破したことなども、米ドルの上昇に拍車をかけることとなりました。
金利差拡大から、円は売られる展開に
このように、主要国では利上げに向けた動きが強まる一方、日本では、大規模な金融緩和が当面続く可能性が高いことに加え、物価上昇率の鈍さなどもあり、内外金利差が拡大したことなどから、円は総じて売られる展開となりました。
なお、新興国通貨については、ワクチン接種の進展の遅れによる成長鈍化懸念のほか、ブラジルやトルコなどでは、政治懸念などの個別要因も嫌気され、弱含む展開となっています。
11月4日の米英金融政策に注目が集まる
こうしたなか、米英では、11月4日にそろって金融政策決定会合が開かれることから、両国の金融政策動向に、市場の注目が集まっています。
なお、足元のインフレ懸念について、主要中央銀行やIMF(国際通貨基金)は、供給制約などの影響による部分が大きく、一過性であるとの見解を相次ぎ示しています。当面は、冬の燃料需要増などが原油価格の上昇圧力となる可能性はありますが、供給制約の解消とともにインフレ率が落ち着けば、長期金利も落ち着きを取り戻すとみられます。
為替市場においては、当面、インフレと金融政策の動向を受け、金利差を材料とした展開が続くと見込まれます。ただし今後は、景気回復とインフレペースを織り込みながら、市場の過度な懸念は、徐々に落ち着きを取り戻すと考えられます。
![【図表】[左図]米ドル(対円)と日米国債利回りの推移、[右図]主要先進国通貨(対円)の年初来推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1761.jpg)
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