日本株式は9月に「往って来い」、引き続き出遅れ
9月初めの菅首相の事実上の辞意表明を機に、追加経済対策や改革への期待が高まり、日本の主要株価指数は同月半ばに1990年8月以来の高値をつけました。しかし、月末の自民党総裁選で岸田氏が勝利すると、改革期待が後退したほか、米長期金利が上昇したことなどもあり、月初からの日本株式の上昇は帳消しとなりました。一方、米国株式は10月下旬に最高値を更新するなど堅調で、日本株式の出遅れ感が依然、強い状況です。

出遅れの主な要因は改善方向、株価には割安感
ただし、日本でも、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展などによって新規感染が抑えられており、今後、経済活動の再開が進むと見込まれます。そして、岸田新政権がコロナ対策と追加経済対策を打ち出す方針であることも踏まえると、企業業績見通しの改善が加速すると想定されます。

また、株価バリュエーションを見ると、米国株式の場合、予想PER(株価収益率)が他の主要国・地域の水準を大きく上回っているだけでなく、同国の過去約6年の平均水準をも上回っています。一方、日本株式の場合、予想PERは過去の平均水準にあり、相対的な割安感が示唆されています。

岸田新政権に対する警戒には行き過ぎの感も
なお、岸田新政権は「成長と分配の好循環」を目指していますが、市場では、格差是正に向けた分配政策を不安視する声も聞かれます。分配財源の柱とみられていた金融所得課税の見直しについては、首相自らが早々に先送りを表明しましたが、代わりの財源として、十分な成長を実現できるかどうかが不透明なほか、企業が分配の強化ばかり求められるようであれば、株主軽視の動きにつながりかねないと懸念する向きがあります。

ただし、成長と分配の好循環の具体策を協議するために設置された「新しい資本主義実現会議」の構成員となる有識者15人の顔ぶれを見ると、7人が女性であるほか、AI(人工知能)やデジタル化の第一人者などに加え、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の普及・定着状況をフォローする有識者会議のメンバーもおり、株主軽視の可能性まで懸念するのは行き過ぎとみられます。

同会議は、経済対策を含む優先政策について、11月上旬にも緊急提言をまとめる予定です。「聞く力」を自負する首相が、上手くバランスのとれた舵取りを進めていく姿勢を示せば、政策期待も日本株式の出遅れ巻き返しに貢献すると見込まれます。

【図表】[左図]主要国・地域の株価の推移、[右図上]主要国・地域の予想EPSの推移、[右図下]TOPIXと予想PERの推移
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。
  • 信頼できると判断したデータもとに日興アセットマネジメントが作成