GDP成長率は7-9月期に急減速
米国の7-9月期の実質GDP速報値は前期比年率+2.0%と、6%台だった1-3月期や4-6月期から急減速し、予想も下回りました。デルタ株の感染拡大や、人手・資材の不足といった供給網上の制約、物価の上昇などが影響しました。
感染再拡大や供給網の混乱により、消費が鈍化
景気の急減速に最も影響したのは、GDPの約7割を占める個人消費です。ワクチン接種の普及に伴ない、過去2四半期は2桁の伸びとなっていたものの、7-9月期は1.6%増にとどまりました。これは、デルタ株の感染拡大により、外出が手控えられるなどして、サービス部門などに影響がでたほか、モノの消費の面でも、自動車など、供給網上の混乱に伴なう品不足が響きました。
また、個人消費と共に景気回復の主な牽引役となっていた設備投資についても、2桁前後だった伸びが1.8%増へと落ち込みました。感染再拡大の影響などから、生産能力などの増強に向けた投資が鈍化したことが響きました。ただし、デジタル化の流れなどを背景に、ソフトウエアや研究開発に向けた投資は2桁増を維持しました。
加えて、住宅投資については、資材・労働者の不足などに伴なう住宅の供給不足や住宅価格の高騰、純輸出については、供給網上の混乱や原材料不足などが影響し、ともに減少が続きました。
高い伸びが見込まれる今年の年末商戦
今後については、9月以降、新規感染者数が減少に転じており、経済活動再開の動きが一段と進むと見込まれます。加えて、年末商戦が控えていることもあり、行動制限時の消費抑制や、経済対策による現金給付などを背景に積み上がった家計の貯蓄の切り崩しが、いわゆるリベンジ消費となって、景気回復を牽引すると期待されます。
年末商戦は例年、11月下旬のいわゆる「ブラックフライデー」が本格的なスタートとなります。しかし、人手不足や物流混乱の影響が心配される今年は、その影響を抑えるために、セールを前倒しする動きが拡がっており、期間が長くなる模様です。全米小売業協会は、今年11〜12月の年末商戦の売上高(自動車・ガソリン・外食を除く)が前年比で8.5~10.5%増と、過去5年平均の4.4%増の倍程度になるとの予想を10月末に公表しています。
与党・民主党内での調整が続く経済対策法案
なお、バイデン政権が掲げる経済対策については、与党・民主党内での調整に時間がかかっている状況です。ただし、子育て支援・気候変動対策に投じる規模を1.75兆米ドルに半減し、財源を巨大企業や超富裕層に対する増税とする妥協案が先週、示されました。今後、さらなる妥協が必要となる可能性もあるものの、成立に至れば、個人消費と共に景気を支えることになると期待されます。
![【図表】[左図]米国のGDP主要項目の推移 、[右図]米家計の預金額*の推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1764.jpg)
- 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。