FRBの決定は市場の予想通り
米FRB(連邦準備制度理事会)は、11月2~3日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、政策金利を据え置いた一方、量的緩和の縮小、いわゆるテーパリングを今月、開始することを決定しました。今回の決定内容は概ね予想通りで、3日の米国市場では、国債利回りが上昇したものの、パウエル議長の会見を受けて上げ幅が縮まったほか、株価は続伸し、主要3指数が揃って最高値を更新しました。また、4日のアジアや欧州でも、株高となった市場がほとんどで、落ち着いた反応が見られました。
テーパリングは22年6月にも終了、再投資は続く
国債とMBS(住宅ローン担保証券)の買入れ規模は今後、月当たりそれぞれ、100億米ドル、50億米ドル縮小されます。これらの額は、経済見通しに変化があれば調整される可能性もあるものの、維持されれば、来年6月にテーパリングが終了し、利上げに向けた環境が整うことになります。ただし、FRBが買入れてきた債券が満期を迎えれば、その分は再投資が継続されます。
パウエル議長は利上げを急がない姿勢を強調
前回9月のFOMCで示された、会合参加者の見通し(左下の表参照)で、2022年に2回の利上げが想定されていたこともあり、市場でも、来年6月ないし7月に利上げ開始、その後、年内にもう1度利上げが行なわれるとの見方が拡がっています。
これに対し、パウエル議長はFOMC後の会見で、高インフレはいずれ落ち着くとして、「今は利上げの時ではない」「忍耐強くいられる」などと述べ、利上げに慎重に臨む姿勢を改めて強調しました。
なお、インフレについてFRBは従来、「一時的な要因による」ものだと、議長を中心に繰り返し指摘してきました。しかし、今回のFOMCの声明文では、「一時的と見込まれる要因を広く反映した」ものとされ、「一時的」との認識の確信度合いが弱められました。一方で、パンデミックと経済活動の再開に伴なう、いくつかの分野での需給の不均衡が大幅な価格上昇につながっているとの説明が加えられ、FRBの想定通り、供給の制約が解消すれば、インフレは抑制されるとの見解が示されました。また、パウエル議長も、来年の4-6月期ないし7-9月期にインフレが鈍化し始めるとの見方を示し、それを確認する必要があると述べました。
現在想定されている利上げは緩やか
市場でも、今年10-12月期にかけてインフレはさらに加速するものの、来年1-3月期以降は鈍化傾向になると想定されています。今後は、こうした見通しと現実との比較なども材料として、利上げ観測が変化し、金融・株式市場にその影響がおよぶと見込まれます。ただし、利上げ観測が強まる場合でも、FOMC参加者の見通し程度にとどまるうちは、水準がかなり低いことなどから、過度に心配する必要はないと考えられます。
![【図表】[左図上]FOMCなどの年内の主な予定、[左図下]FOMC参加者の見通し(中央値)、[右図]米国の物価上昇率と政策金利の推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1765.jpg)
- 上記は過去のものおよび予定、見通しであり、将来を約束するものではありません。