温暖化対策を成長につなげようとの動きが拡がりつつあり、これに焦点を当てたファンドの設定が相次ぐなど、投資の分野でも注目が高まっています。

気温上昇「1.5度」目標とカーボンニュートラル
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、2011~20年の世界の平均気温は、産業革命前と比べ既に1.09度上昇したとのことです。一方、2015年に採択された、温暖化対策のための国際枠組み「パリ協定」では、「産業革命以降の世界の平均気温の上昇を2度より十分低く保ち、1.5度に抑える」という目標が掲げられています。また、IPCCは、人々が心身とも安全・健康に暮らすだけでなく、貧困などの社会課題を解決する上で、気温上昇を2度ではなく、1.5度未満にすることが重要との報告を18年に発表しています。

なお、平均気温の上昇を1.5度に抑えるには、主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の世界の排出量を30年に10年比で45%減らし、50年には「実質ゼロ」にする必要があるとされています。この「実質ゼロ」とは、CO2の排出量から、森林などによって吸収する量や技術などを駆使して除去・回収する量を差し引いた実質的な排出量をゼロにすることを意味し、「カーボンニュートラル(炭素中立、脱炭素)」と呼ばれています。

対策に慎重な国も少なくないが、変化の兆しも
世界経済フォーラム(WEF)が、世界の政府や企業などの意見を基にまとめた「グローバルリスク報告書」の2021年版では、発生の可能性が高いだけでなく、影響が大きいリスクとして、「異常気象」「気候変動への適応・対応の失敗」「人為的な環境災害」などが上位に挙げられています。このように、温暖化対策は、国際社会が一体となって取り組むべき重要課題と考えられますが、温室効果ガスの大幅削減を求められる新興国など、政府レベルでは慎重な国も少なくありません。

そうした中、温室効果ガス排出量で世界1位の中国と2位の米国が、温暖化対策で協力していくことを謳った共同宣言を11月10日に発表しました。通商や人権などの分野では激しく対立する両大国の政府が、温暖化対策で協調することは、今後の世界の動きにとって大きなプラスになると考えられます。

温暖化対策は企業経営の重要課題の1つに
また、企業や地方自治体、市民をはじめとする、政府以外の様々な担い手の役割も重要です。特に企業の場合、事業活動に伴なう温室効果ガスの排出を抑えることが求められるほか、革新的技術の開発などを通じ、温室効果ガスの除去・回収に寄与するところが出てくることも期待されます。一方、温暖化対策に後ろ向きな企業の場合、消費者からそっぽを向かれるリスクが高まるとみられ、同対策を経営の重要課題の1つと捉えるかどうかの違いが、株価の勢いや方向性の大きな違いの一因になると考えられます。

【図表】[左図]平均気温の上昇に伴なって見込まれる変化、[右図]世界のCO2排出量に占める各国・地域のシェア
  • IPCCの報告書や報道をもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。