リラが急落し、安値を大きく更新
11月23日にトルコ・リラの下げが加速し、一時、対米ドルおよび対円で前日比15%強売り込まれ、引けでも約11%の下落と、最安値を大きく更新しました。なお、昨年末との比較では、対米ドルで約42%安、対円でも約35%安となっています。

利下げを執拗に求める大統領がリラ安の原因
トルコ・リラが下落基調なのは、中央銀行の目標水準を大きく上回るインフレが続いているにもかかわらず、高金利がインフレの原因だと主張するエルドアン大統領が執拗に利下げを要求し、中央銀行がこれに屈してきたためです。政策金利は、9月23日から11月18日までに計3回、合計4%ポイント引き下げられました(19%→15%)。

なお、23日のトルコ・リラの急落については、前日にエルドアン大統領が、最近の大幅な利下げを擁護しただけでなく、金融政策の引き締めは、インフレ低下につながらず、国を縮小、弱体化させ、国民を失業、飢え、貧困に追いやるものだとして、これを拒否すると述べたためです。それにとどまらず、同大統領は、トルコ経済を攻撃する外国勢力などの陰謀があると示唆したほか、経済的な独立戦争に勝利すると宣言し、今後も利下げを追及する姿勢を鮮明にしました。

23日の通貨急落を受け、大統領は中央銀行総裁と会談したと報じられていますが、その内容は明らかではありません。ただし、中央銀行は、足元の為替相場は経済の基礎的条件からかけ離れているとして、企業や国民に対し、為替取引を控えるよう、警告を出しました。

リラの本格的な反発には中央銀行の独立性の回復が不可欠
通貨安の継続・加速に伴ない、輸入品の価格上昇などを通じて、トルコのインフレ率はさらに押し上げられると見込まれます。また、足元でのトルコ・リラの下落があまりに急なこともあり、市場の一部では、トルコ中央銀行が利上げに舵を切るとの見方も台頭しているようです。こうした中、目先、トルコ・リラが短期的に急反発する可能性も考えられます。

ただし、中央銀行が利上げを決断しても、大統領が中央銀行総裁を更迭し、その後、改めて利下げが行なわれるという状況がこれまで繰り返されてきました。そうした状況を脱し、中央銀行の独立性が確認されない限り、トルコ・リラが本格的な持ち直しに転じると見込むのは難しいと考えられます。

なお、一段と進んだ通貨安を受け、首都アンカラや最大都市のイスタンブールなどにおいて、物価高騰を懸念する市民が政府に対する抗議デモを行なったとのことです。こうした動きが、利下げを求める大統領の動きに拍車をかけることになるのか、あるいは、そうした考え方を改めさせる契機となるのか、今後が注目されます。

【図表】[左図]トルコ・リラの推移、[右図]トルコの物価および主要政策金利の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。