WHOは最も警戒度が高い変異株に分類
南アフリカ当局は11月25日、高い感染力を持つ恐れのある、新たな新型コロナウイルス変異株を確認したと発表しました。これを受け、26日には、世界的に株価が大きく下落した一方、円が買われたほか、欧米などの長期金利が大きく低下するなど、世界の金融市場が揺れました。

WHO(世界保健機関)が「オミクロン」と名付けたこの変異株は、デルタ株などと並んで最も警戒度が高い変異株に分類されました。ただし、同分類の従来の変異株より多くの変異があり、再感染のリスクがより高いとみられるとのことです。

渡航制限が拡がる一方、重大視せずとの見解も
オミクロン株の詳細はまだ不明ながら、英国や米国、ドイツ、イタリア、シンガポール、マレーシア、ロシア、サウジアラビアなど、各国が相次いで南アフリカなどからの渡航制限を発表しています。

一方、南アフリカや隣国ボツワナなどのアフリカ以外で感染が確認されているのは、26日までに香港、ベルギー、イスラエル、28日までに英国、ドイツ、イタリア、オランダ、オーストラリアなどとなっています。迅速な水際対策などにもかかわらず、今後、感染が拡がることとなれば、ロックダウン(都市封鎖)など、一段と厳しい行動制限が再度、導入・強化され、世界経済の回復の足を引っ張ることも考えられます。

なお、オミクロン株の感染拡大に伴なう原油の需要減退の可能性などから、原油先物は26日に急落しました。ただし、OPEC(石油輸出国機構)および非加盟の産油国からなるOPECプラスは、12月1~2日に開く予定の、2022年1月の原油供給量の扱いを決める会合で、増産(協調減産の緩和の拡大)の見送りを決定する方向に傾きつつあると報じられています。

また、金融市場が織り込む、米国や英国での利上げの可能性が26日にやや後退しました。ただし、米FOMC(連邦公開市場委員会)で投票権を持つアトランタ連銀総裁は同日、オミクロン株がデルタ株に類似しているとの前提に基づくと、経済がある程度減速する可能性はあるものの、影響を重大視せず、インフレ抑制に向け、量的緩和の縮小ペースを加速することに前向きとの見解を示しました。

不透明感を背景に、当面、警戒色の強い展開に
オミクロン株の出現に伴なう不透明感の高まりから、当面の金融市場は憶測などで大きく振れる可能性があり、注意が必要です。なお、新型コロナウイルスのワクチンを開発した米医薬品大手などは、2週間以内にオミクロン株に対する効果などについてデータを取得でき、仮にワクチンの調整が必要と判明した場合、6週間以内にワクチンに適用し、100日以内に出荷できるとの見解を示しています。

【図表】[左図]世界の主要指標の変化、[右図]世界の新型コロナウイルスの新規感染者数
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。