日本企業の劣後債の年間発行額は過去最高
2021年の日本企業による劣後債の年間発行額は、11月25日時点で、すでに過去最高額を更新しました。低金利が続くなか、国債や普通社債に比べて相対的に利回りが高い劣後債への投資家の高いニーズが起債の下支えとなっています。企業の資金調達の選択肢のひとつとして積極的な活用がみられるようになりました。

劣後債にみる日本企業の資金調達の多様化
日本において、企業の資金調達は、金融ビックバン・規制緩和によって、間接金融(銀行融資)から直接金融(証券市場を通じた資金調達)への拡がりをみせました。その過程において、事業会社は主に普通社債による資金調達を行なってきましたが、劣後債を発行していたのは主に金融機関でした。

しかし近年では、金融機関以外の事業会社による劣後債の起債が増えています。普通社債で資金調達を行なう場合、自己資本比率が低下します。また、株式で資金調達した場合は、自己資本比率は低下しないもののROE(自己資本利益率)を低下させる可能性があります。一方、負債と資本の中間的な特性をもつ劣後債は、発行体にとって資金調達額の50%程度が負債ではなく資本と認められるので、負債を増やさずに資金調達を行ないたい企業にとって、有効な手段といえます。

そして最近では、日本の事業会社による劣後債の起債は、円建てだけでなく、米ドル建てを中心に外貨建てで行なわれるケースも増加しました。今年はすでに、劣後債発行額の約27%が外貨建てとなっており、昨年の約9%から拡大しました。発行額ではすでに1.6兆円に達しており、これも過去にない額で、劣後債市場の拡大をけん引しました。

劣後債に限らず、外貨建て社債全体で日本企業による発行が伸びています。例えば、大型M&A(企業の合併・買収)などで多額の資金が必要な企業は、旺盛な投資家需要が見込まれる外貨建て市場での起債を積極的に行なうケースがありました。海外において、金利の先高観がみられる環境下、一定の利回りが確保できる社債市場全体で投資家ニーズが高まっており、発行体にとっても好条件で起債できる環境にあることが背景にあると考えられます。こうした社債市場全体の流れは、劣後債市場にも追い風となっているようです。

外貨建ても含めた分散投資は、投資信託で
劣後債は、普通社債に比べてリスクが比較的高いこともあり、様々な業種の銘柄に分散したり、また同じ発行体でも異なる通貨建ての社債に分散するなど、リスク低減を図りながら投資することが重要です。劣後債への投資においては、複数の銘柄や通貨などに分散投資を行なう投資信託の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

【図表】[左図]日本企業の劣後債の発行額の推移、[右図]今年の日本企業の劣後債(外貨建て)発行事例
  • 信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。