11月の世界の金融市場では、上旬は、FRB(米連邦準備制度理事会)がFOMC(米連邦公開市場委員会)において、量的緩和の縮小開始を決定したものの、FRB議長が利上げに慎重な姿勢を示したことなどから、株価は世界的に上昇しました。また、中旬には、好調な企業業績などが好材料となり、欧米の主要株価指数が一時最高値を更新する局面も見られました。しかし下旬にかけては、FRBの次期議長について、よりハト派とされるブレイナード理事の指名が見送られ、パウエル現FRB議長を再任する方針が発表されると、2022年上期に利上げが実施されるとの見方から、金利が上昇し、割高感が意識されたハイテク株が売られる場面がありました。また、南アフリカで新たな変異株が見つかったことを受けて、市場心理が悪化しました。

FRBによる量的緩和縮小ペースの判断の行方に注目
市場では、FRB議長が、米国の高水準のインフレ率や雇用者数の増加ペースなどを受けて、量的緩和の縮小の早期終了を検討することが適切と述べたことなどから、12月のFOMCで、量的緩和の縮小ペースの加速が決定されるとの見方が強まっています。一方、新たな変異株の発見により、経済への影響が懸念され始めたことで、縮小ペースを減速させるとの見方もあります。FRBは、量的緩和の縮小が終了すると利上げに着手し始めるとみられることから、FOMCの結果次第では、利上げの前倒し観測が強まり、市場の変動要因となる可能性があります。

原油価格を左右するOPECプラス閣僚会議
高水準で推移する原油価格の抑制に向けて、米国や日本、中国などが協調し、石油の備蓄放出に向けて動く中、1日より開催される石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される、OPECプラス閣僚会議では、新たな変異株がもたらす影響を見極めたうえで、現行の増産計画の変更など、どのような対応をとるのか注目されます。市場では、石油の備蓄放出が進んだ場合、OPECプラスは原油の増産を一時停止する可能性があるとの見方もあり、そうした場合には、原油価格の更なる上昇が懸念されます。

懸念される新型コロナウイルスの感染再拡大
ワクチン接種の普及に伴なう経済正常化が進む一方、足元では、南アフリカで高い感染力を持つとされる新たな変異株(オミクロン株)が確認され、各国がアフリカなどからの渡航制限を発表するなど、経済への影響が懸念されています。また、欧州では既に新型ウイルス感染再拡大を受けて、オーストリアなどでロックダウン(都市封鎖)が開始されました。米国においても、12月には、感染者が増加傾向にある中、クリスマスなどで人の移動が更に活発化する可能性があり、警戒感が高まっています。こうしたことから、世界に感染が拡大し、行動制限などが強いられた場合、世界経済の先行き不透明感が高まる可能性があります。

【図表】12月の注目される金融政策および政治・経済イベント
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。スケジュールは予告なしに変更される可能性があります。
  • 上記は過去のものおよび予定であり、将来を約束するものではありません。