中国市場では政策動向がより重視される傾向に
2020年後半以降、中国政府がインターネットや不動産、教育関連事業などへの規制を強化する中で、株式市場ではこれまで以上に政策動向が重要視される傾向が強まっています。こうした状況を受け、足元では中長期的な投資テーマとして、政府の支援が期待されるテクノロジーや新エネルギー車など共に、「脱炭素」分野への関心が高まっています。
脱炭素実現に向けた最重要方針が打ち出される
世界最大のCO2(二酸化炭素)排出国である中国は、近年、地球温暖化対策の推進に積極的な姿勢を見せています。2020年9月の国連総会では、習近平国家主席が2030年までのカーボンピークアウトと2060年までのカーボンニュートラル*の達成を表明したほか、第14次5ヵ年計画(21~25年)では、それまでの“低炭素”から政策スタンスを引き上げ、“脱炭素”へとギアチェンジした目標が打ち出されました。
また、中国共産党と政府は、今年10月下旬に脱炭素に向けた基本方針および2030年までの行動計画を相次いで発表しました。これらはカーボンピークアウト実現に向けた中国初のロードマップであり、エネルギー消費量の削減や部門別CO2排出削減、再生可能エネルギー別発電設備容量などの数値目標が具体的に掲げられています。
中国企業は既に、太陽光発電や風力発電、EV(電気自動車)など、脱炭素に向けた多くの分野で世界的な競争力を獲得していますが、新たなロードマップが打ち出されたことにより、今後、政府の強力な政策支援が予想され、更なる成長が期待できると考えられます。
金融政策面でも脱炭素を後押し
そのほか、同基本方針では、グリーン金融の発展も目標に掲げられています。中国人民銀行(中央銀行)は既に、炭素排出削減効果の大きいプロジェクトに対する優遇金利での融資支援スキームの構築を進めているほか、11月初旬には、クリーンエネルギーや省エネルギー関連企業に対する低利融資制度も発表しており、金融政策の面からも脱炭素への対応を促す姿勢が明らかにされました。
脱炭素は米中が協働可能な重要テーマ
このように、中国国内で脱炭素への機運が高まる一方、対抗姿勢を強める米中の関係など、外部環境の不透明さを懸念する声も聞かれます。しかし、先日開催されたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)の期間中に米中が気候変動対策について共同宣言を発表したことからも、脱炭素は両国が協働可能な重要分野の一つであると考えられます。気候変動問題は世界共通の問題であり、中長期で取り組むべき課題であることから、今後も政府の後押しは続くと考えられます。そのため、中国の脱炭素関連分野には引き続き多くの投資家の注目が集まると見込まれます。
地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)濃度の上昇を抑制すべく、CO2の排出量を減少に転じさせることを「カーボンピークアウト」、CO2排出量から吸収・除去量を差し引いた合計をゼロにすることを「カーボンニュートラル(炭素中立、脱炭素)」といいます。

- 中国政府資料などから日興アセットマネジメントが作成
- 上記は目標であり、将来を約束するものではありません。