タカ派寄りのFOMCを市場は無難と受け止め
米FRB(連邦準備制度理事会)は12月14〜15日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で、量的緩和の縮小、いわゆるテーパリングの加速を決めるなど、金融緩和の縮小に前向きなタカ派寄りの姿勢を示しました。ただし、15日の米金融市場では概ね無難と受け止められ、国債利回りの上昇が限定的だったほか、ハイテク株などを中心に株高となりました。

インフレ警戒姿勢が鮮明に
11月に開始したばかりのテーパリングについて、FRBは今回、インフレの進展と労働市場の一段の改善を踏まえて、ペースを引き上げることを決定しました。具体的には、月当たり150億米ドルとなっている、資産買入れの規模の縮小額を、2022年1月からは倍の300億米ドルとします。これにより、従来、同年6月と想定されていた資産買入れの終了時期が3月に前倒しとなります。

インフレについては、「一時的」との表現がFOMCの声明から削除されただけでなく、FOMC参加者の見通し(左下・上段の表参照)が21、22年を中心に9月の前回予想から引き上げられました。そして、パウエル議長は会見で、高インフレが定着しかねないリスクに対応すると強調したほか、資産買入れの終了から利上げまでそれほど長い時間を要さないとの見解を示しました。

FRBの対話が奏功し、市場の動揺を回避
FOMC参加者の政策金利見通しでは、22年の利上げは前回予想で1回と想定されていたものが、今回は3回と、市場予想の中心の2回を上回りました(23年は前回予想と同じ3回、24年は前回予想の3回から2回に下方修正)。今回、テーパリングの加速の決定や22年の利上げ見通しが3回に増えたにもかかわらず、米金融市場が落ち着いた動きとなったことは、金融緩和の縮小に向けた、FRBの金融市場との対話が上手くいっていることを示していると考えられます。

なお、一部では、FRBがインフレへの対応で後手に回り、インフレが激しくなる一方で、景気は鈍化に向かうという、スタグフレーションを懸念する向きもありました。また、IMF(国際通貨基金)は12月初め、経済回復力の強さと潜在的なインフレ圧力の規模は国によって大きく異なり、各国特有の状況にあわせて政策対応を調整する必要があるとの見解を示し、米国について、量的緩和の縮小ペースを速め、政策金利の引き上げを目指すべきとしました。こうした中、FRBが今回、インフレリスクへの対応姿勢を鮮明にしたことが、金融市場で好感された面もあるとみられます。

今後も金融緩和の縮小が続くとみられる中、その過程でFRBが市場と上手く対話を続けながら、金融市場の動揺を招くことなく、適時適切な政策判断を続けることが期待されます。

【図表】[左図上]FOMC参加者の今回の見通し(中央値)単位:% 、[左図上]2022年のFOMC開催予定、[右図]米国の物価上昇率と政策金利の推移
  • 上記は過去のものおよび予定、見通しであり、将来を約束するものではありません。