世界的に不安定な相場環境が続いており、今後もこうした環境が継続する可能性があります。しかし、こうした時こそ、資産運用の原理原則である長期国際分散投資に立ち返る必要があると考えます。今回は、日本の公的年金の運用を担い、長期国際分散投資を投資原則に掲げる年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を取り上げます。
GPIFは世界最大級の公的年金基金
GPIFは、約189兆円(2022年12月末)もの資産を運用しており、公的年金基金のなかで世界最大級の規模を誇っています。その運用原資は、年金給付の財源となる年金積立金であり、将来の年金受給者や現役世代のために運用を行なっています。こうした資金性格であることから、単年度ごとではなく長期的に、一定の運用利回りを最低限のリスクで確保することを運用目標としています。
目標達成のために資産構成割合を調整
目標の運用収益を最低限のリスクで実現するために、GPIFの資産構成割合は、各資産の期待収益率やリスクなどを考慮して決められています。
基本の資産構成割合は、2020年4月からの5年間、国内株式が25%±8%、外国株式と国内債券がそれぞれ25%±7%、外国債券が25%±6%と設定されており、直近の状況は左下図の通りです。そして、各資産の配分が価格変動によって増減し、資産構成割合が一定の許容幅から逸脱する場合には、元の割合に戻すリバランスが行なわれる仕組みとなっています。例えば、株価下落によって株式の構成割合が一定程度低下した場合、GPIFは割合が増加した債券を売却して株式を追加購入することになります。GPIFのこうした動きによって、一定の金額が株式市場に流入することもあり、株価の中長期的な下支え要因の一つとして、GPIFの動向は注目を集めています。
GPIFの資産構成割合はあくまで一例ですが、投資対象を分散することでリスクの低減が期待されるほか、長期投資によって運用リターンの安定化も期待できます。また、海外資産を投資対象に加えることで、分散効果を高めながら、世界経済の成長の果実を得やすくなると考えられます。
運用成績は長期的に概ね堅調
実際に、GPIFの運用成績は、単年度では収益率がマイナスのケースもあるものの、長期的には概ね堅調となっています。例えば、リーマン・ショックがあった2008年度の収益率は▲7.57%ですが、市場運用開始(2001年度)から振り返ると、2022年12月末までの年平均収益率は+3.38%、累積収益額は+98兆円にものぼります(右下図)。
このように、GPIFの運用手法は、「短期で資産倍増」や「一攫千金」には結びつかないものの、個人投資家が長期の資産運用を行なう上で、参考になると考えられます。金融市場は、時に大きく荒れることから、予想外の市況変動に振り回されないよう、国際分散投資を長期的な資産形成に取り入れてはいかがでしょうか。
- GPIFのデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
- 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。