2024年の見通しは0.2ポイント上方修正
IMF(国際通貨基金)は1月30日に最新の世界経済見通しを発表しました。それによると、世界のGDP成長率は、2023年(推計)の前年比+3.1%(昨年10月時点の見通しから0.1ポイントの上方修正)に続き、2024年は+3.1%(同0.2ポイントの上方修正)、2025年は+3.2%(修正なし)となっています。こうした見通しは、世界経済が急減速を免れ、軟着陸に成功することを示唆するものです。ただし、高水準の政策金利、財政支援の縮小、基調的な生産性の伸びの弱さなどが重石となり、過去の平均的な成長率を下回るとされています。
個別の国・地域の見通しは、米国や中国などで上方修正、ユーロ圏などでは下方修正
個別の国・地域の2024年の見通しについては、先進国では、米国が、昨年終盤にかけての個人消費の堅調さなどを反映して上方修正されました。一方、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けているユーロ圏は、消費者心理や企業投資の低迷が続いていることなどから下方修正となりました。また、日本は、円安や、コロナ禍後の消費拡大および企業投資の回復が一巡したとみられることなどから、下方修正となりました。
新興国では、中国が、昨年の成長率が想定を上回ったとみられることに加え、大規模な財政支援を反映し、上方修正となりました。
世界景気の行方を左右するインフレ動向
IMFはリスク要因の1つとして、インフレ動向を挙げています。世界的なインフレは、2022年にピークをつけた後、供給網や労働力など、供給面の改善などを背景に、IMFの予想以上の速さで低下してきました。これに伴ない、足元では、主要国で利上げの打ち切りや利下げへの転換が見込まれている状況です。しかし、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザでの軍事衝突、紅海での民間船舶への攻撃が続いており、地政学上の問題の激化でインフレが再び加速すれば、主要国での金融引き締めの長期化につながる可能性があります。
一方、IMFは、世界の成長率を予想以上に押し上げる要因も挙げています。インフレについては、想定より鈍化が進めば、主要国での金融緩和を促進することになります。また、不動産危機に見舞われている中国で、不動産部門関連の改革が進んだり、財政支援がさらに強化されれば、国境を越えた波及効果を生む可能性があるとされています。さらに、AI(人工知能)の活用や供給側の改革によって、労働者の生産性・所得が押し上げられる可能性があるとしています。
- 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。