2022年以降、世界的なインフレ高進を背景に、海外を中心に急速な金融引き締めが拡がりました。しかし、足元では、欧州中央銀行が6月の理事会で物価見通しの改善を理由に利下げを決定したほか、米国でも金融当局者から年内の利下げの可能性が示唆されるなど、主要国・地域で金融政策の転換期を迎えつつあります。本レポートでは、米国の過去の利下げ局面における株式・債券のパフォーマンスについて、振り返ってみます。

過去の米利下げ局面を振り返る
米国の利下げ局面は、2000年以降で3度あります。1度目は2001年1月に政策金利の引き下げが開始された局面で、ITバブル崩壊や同時多発テロなどの影響で景気後退に陥った時期にあたります。2度目は2007年9月からの利下げサイクルで、リーマン・ショックなど世界的な金融危機に陥った時期です。そして3度目は、2019年7月に金利の引き下げが開始された局面です。同局面では、米中貿易戦争などの影響で世界の景気悪化懸念が高まったのに続いて、新型コロナウイルスの感染拡大に伴なうサプライチェーンの混乱が生じました。

債券への投資は、景気後退への備えとなる可能性
米国の株式・債券の中長期での動きをみると、株式のパフォーマンスが相対的に良好となっているものの、前述の利下げ局面に限っては、債券が相対的に良好なパフォーマンスとなっています【左下グラフ】。通常、金利の低下は債券価格の上昇につながることに加え、これらの利下げ局面では、景気後退懸念が高まったことなどから、株式と比べて安全性の高い資産である債券が選好されたと考えられます。

また、利下げ局面における債券のパフォーマンスを国債の年限別にみると、年限が長いものほど高リターンだったことがわかります【右下表】。一般に、残存期間の長い債券は、短い債券に比べて金利変動時の価格変動が相対的に大きくなる特性があり、米国の過去の利下げ局面でも、こうした債券の特性が表れていたことが確認できます。

過去の傾向から考えると、ポートフォリオに債券を加えておくことで、景気後退懸念が高まった際の備えとなる可能性があります。また、今後、米国が利下げ局面に入った場合、日米金利差の縮小に伴ない、外国為替市場では米ドル安/円高が想定されるものの、債券の価格上昇が円高による影響を緩和すると考えられ、特に、年限の長い債券ほど金利低下時の価格上昇が大きくなると期待されます。

こうした債券の特性や今後の米利下げの可能性などを踏まえ、運用資産への米国債券の組み入れや投資比率の引き上げなどを検討してみてはいかがでしょうか。

【図表】過去の米利下げ局面では、債券が相対的に堅調なパフォーマンス(米ドルベース)[左グラフ]<米国の株式、債券、政策金利の推移>、[右表]<過去の米利下げ局面における騰落率>
  • (信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成)
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。