25年の世界見通しを0.1ポイント下方修正
IMF(国際通貨基金)は10月22日に最新の世界経済見通しを発表し、世界のGDP成長率について、2024年は据え置き、25年は前回7月の想定から0.1ポイント下方修正し、いずれも前年比+3.2%としました。インフレが鎮静化に向かう中、軟着陸シナリオ自体は維持したものの、世界の成長率は中長期的にも3%程度と、勢いを欠く可能性が高いとして、成長を押し上げるべく、生産性の向上などに向けた構造改革が必要だとしています。
24年の見通しは、米・英やブラジルなどで上方修正、日本、メキシコ、中国などでは下方修正
個別の国・地域の24年の見通しでは、先進国のうち、米国については個人消費の堅調さなど、英国については、インフレ及び金利の低下に伴ない、消費需要の喚起が見込まれることなどを背景として、上方修正しました。一方、ユーロ圏については、ドイツやイタリアで製造業の低迷が続いていることなどから、下方修正しました。日本についても、品質不正問題で自動車メーカーの生産・出荷が停止し、供給が混乱した影響が残るほか、インバウンド効果の息切れを主な背景として引き下げました。
新興国では、ブラジルの見通しを大きく上方修正しました。その主な要因は、労働市場の引き締まりのほか、洪水の影響が想定より小さかったことなどを背景に、上半期に個人消費や投資が予想以上に堅調となったことです。一方、メキシコについては、金融引き締めに伴ない、内需の鈍化が見込まれるなどとして、大きく下方修正しました。また、中国についても、不動産部門の不振や消費者信頼感の低さなどをから、下方修正しました。
見通しの下振れリスクが山積
IMFは、多くの国で選挙が実施されることもあり、政策面での不透明感が強い中、見通しに対するリスクは下振れ方向に傾いているとしています。主なリスク要因として、紛争の激化といった地政学リスクのほか、追加関税の応酬のような保護主義的政策に伴なう貿易の混乱、25年末に期限を迎える米国の個人所得減税(いわゆる「トランプ減税」)の延長などに伴なう財政の悪化、米欧などでの移民の制限、金融状況のひっ迫につながる市場の混乱を挙げています。
右下のグラフの水色の線に見られる通り、これらのリスクが全て現実のものとなる場合、世界の成長率は、25年に0.8ポイント、26年までに1.3ポイント下振れし、世界経済が失速しかねないと想定されており、各リスク要因が現実のものとなるのか否かなど、今後が注目されます。
![【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)、[右図]世界の実質GDP成長率の下振れシナリオ](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-2023.jpg)
- (出所:IMF「World Economic Outlook, October 2024」)
- 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。