植田総裁の会見を経て、円安が加速
日本銀行(以下、日銀)は12月18~19日に開催した金融政策決定会合で、市場予想通り、政策金利(無担保コール翌日物金利の誘導目標)を0.25%程度で据え置くことを決めました。
日銀の声明文では、景気の現状について、一部に弱めの動きも見られるが、緩やかに回復しているとの判断が維持されたほか、インフレ率についても、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、2026年度にかけて物価安定目標の2%に収束していくとのシナリオが維持されました。
19日の市場では、前日の米国での長期金利の上昇および株安を受け、国債利回りは上昇、株式相場は下落しました。ただし、日銀の決定発表後に円が1米ドル=155円台まで売られると、株価の下げ幅が縮まりました。円相場はその後、植田総裁の会見を受けてさらに下落し、ニューヨーク外国為替市場では157円台となりました。
賃金と次期米政権の政策に関する材料待ち
植田総裁は会見で、経済・物価が見通しに概ね沿って推移すれば、それに応じて政策金利を引き上げていく方針を再確認しました。そして、経済・物価のデータがここ数ヵ月、想定通りに推移しているとの見解を示しました。そうした状況下で今回、利上げを見送った主な理由として、同総裁は、賃金の上昇および米次期政権の政策に関する判断材料が「もう1ノッチ(段階)欲しい」と述べました。
トランプ次期米大統領は、2025年1月20日の就任初日に25以上の大統領令などを出す計画だと報じられています。また、賃金に関しては、春闘での労使交渉の集中回答日は例年、3月半ばです。植田総裁は、そこまで待たなくとも春闘の勢いはある程度分かるとしているものの、2025年1月23~24日の日銀会合の段階では、賃金についてはもちろん、次期米政権の政策についても、十分な材料が得られない可能性があります。
同総裁は、1月の会合について、その他の情報も含めての総合判断にならざるを得ないと述べました。そうした慎重姿勢を受け、市場では円がさらに売られることとなりましたが、円安が続けば、日銀には利上げ圧力がかかることとなります。なお、金融市場が織り込む利上げの確率は、1月が4割弱、3月が4割強となっています。
- 日銀、総務省、厚生労働省などの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
- 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。