近年、暗号資産を巡っては、一部が中南米やアフリカの国で法定通貨として採用されたことや、米国で暗号資産を対象とするETF(上場投資信託)が誕生したことなどが話題となったほか、トランプ次期米大統領が就任し、同氏が唱えてきた規制が整備されれば暗号資産業界の振興につながるとの期待も高まっており、注目を集めています。

暗号資産はリスクやリターンが突出して高いほか、他のアセットクラスと値動きの相関が低い
代表的な暗号資産であるビットコインのデータをもとに、株式や債券など他のアセットクラスと過去10年間のパフォーマンスを比較すると、暗号資産はリスク(値動きの大きさ)が非常に大きいものの、リターンも相応に高かったことがわかります【図表①】。こうした突出したリターンの高さが、投資家から注目を集める主な要因になっているとみられます。

また、各資産の値動きの相関係数*に着目すると、暗号資産は他のアセットクラスとの相関が低く、ポートフォリオに暗号資産を加えることによって、資産全体の分散効果を高める働きが期待されます【図表②】。さらに、近頃では、トランプ氏の政策によるインフレ再燃懸念の高まりに伴ない、インフレ耐性のある資産との評価からも注目されており、米国の法人や機関投資家などの間で、ポートフォリオに暗号資産を加える動きが拡がりつつあります。2つの資産間の値動きの連動を表す数値であり、1から-1の間で、1に近いほど同じような値動きに、-1に近いほど逆の値動きになることを表します。

暗号資産関連銘柄などの活用も選択肢の一つ
暗号資産は投資対象としての存在感が高まっている一方、投資にあたっては価格変動リスクの大きさ以外にも留意すべき点があります。一例として、暗号資産を保有する際のセキュリティが挙げられます。過去には、複数の暗号資産取引所がハッキングされ、巨額の盗難被害が発生しました。米国などでは暗号資産を対象とするETFが上場しており、投資家はETFを活用することで暗号資産の盗難リスクなどを軽減できますが、現状、日本では暗号資産を対象とするETFは認められていません。

また、日本では、暗号資産に関する税制は株式や投資信託ほど整っておらず、投資しにくいという課題もあります。こうしたことから、暗号資産に直接投資するのではなく間接的に投資成果を得るための手段として、暗号資産を保有している企業や暗号資産に関連するビジネスを行なう企業など、暗号資産と値動きの連動性が強い銘柄のほか、そうした銘柄に着目する投資信託に投資することも選択肢の一つとして考えられます。ただし、暗号資産関連銘柄は、一般的な銘柄と比べて値動きが大きい傾向にあることから、より慎重な投資判断が求められる点には注意が必要です。

【図表①】暗号資産および主なアセットクラスの直近10年間のパフォーマンス(米ドルベース)
【図表②】各アセットクラスの相関係数(米ドルベース)
  • (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)