金(スポット)価格は、2022年11月頃から上昇基調で推移しており、今年の2月上旬には史上初めて1トロイオンス=2,900米ドル台をつけました。こうした金の堅調なパフォーマンスを支えている要因の一つには、中央銀行(外貨準備を管理する通貨当局を含む)の積極的な金購入があるとみられています。そこで本稿では、中央銀行による金の購入動向や背景などをご紹介します。

中央銀行による金購入は高水準で推移
世界の中央銀行による金の年間購入量は、2022~24年に3年連続で1,000トン超となるなど、高水準で推移しています(グラフ【A】)。その一方で、米国以外の中央銀行が保有する米国債の残高が減少傾向を辿っていることから(グラフ【B】)、外貨準備の一部を米国債から金にシフトさせる動きがあるとみられています。

こうした動きの背景としては、①米国の政府債務水準の上昇を受け、米国債と比べた金の価値の安定性への評価が高まっていること、②中国など新興国の中央銀行が、米国による米ドル建て資産の凍結といった潜在的リスクへの備えを進めていること、などが考えられます。

米国時間外での取引が金価格の高騰に寄与か
2020年末を基準に、金の累積騰落率を取引時間別に算出すると、米国時間外の取引が、2022年11月頃からの金価格の上昇に大きく寄与してきたことが読み取れます(グラフ【C】)。同年以降の世界の金需要における中央銀行のシェア拡大と併せて考えると、中国など新興国の中央銀行による取引が金相場に強く影響したと推察されます。

中央銀行の金購入は引き続き好材料に
米トランプ政権2期目で見込まれている減税といった拡張的な財政政策や、米中対立の先鋭化などを考慮すると、上述の中央銀行による積極的な金購入の背景は、今後も大きくは変わらないと見込まれます。

こうした国際政治経済情勢を背景とする中央銀行による積極的な金購入は、金相場にとっての構造的な追い風になると期待されます。金投資の好材料の一つとして注目してみてはいかがでしょうか。

【図表】【A】世界の中央銀行による金の購入量
【図表】[左図]【B】米国以外の中央銀行が保有する米国債の残高、[右図]【C】取引時間別の金の累積騰落率
  • WGC(ワールドゴールドカウンシル)などの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。