2024年9月以降、6会合連続の利下げ
ECB(欧州中央銀行)は、トランプ米政権の相互関税が発動されて以降初となる政策理事会を4月16・17日に開催し、市場予想通り、6会合連続となる0.25ポイントの利下げを決定しました。これにより、主要政策金利のうち、市場金利の下限となる「中銀預金金利」は2.25%となりました。また、声明では、インフレ率の鈍化が順調に進んでいるとの認識を維持した一方、「金融政策は実質的に制約的でなくなりつつある」との文言を削除しました。さらに、米政権の政策に伴なう不確実性の高まりを背景に、ユーロ圏の経済見通しが悪化する可能性があると指摘し、ラガルド総裁も会見で、経済の下振れリスクが高まっていると述べました。
17日の金融市場では、ECBの声明やラガルド総裁の会見を受け、追加利下げ観測が強まり、ユーロ圏の国債利回りが低下したほか、ユーロが対米ドル、対円などで下落しました。株式市場では、追加利下げ観測が相場の下支え要因となったものの、貿易摩擦に伴なう経済や企業業績への影響が懸念され、ユーロ圏では総じて株安となりました。
経済見通しは悪化、インフレ率には下押し圧力
ラガルド総裁は会見で、世界的な貿易摩擦の激化やそれに伴なう不確実性により、ユーロ圏の輸出が抑制されれば、投資や消費の落ち込みにつながることも考えられ、ユーロ圏の経済成長を鈍化させる可能性が高いとの見方を示しました。
また、エネルギー価格の下落やユーロ高につながり、ユーロ圏のインフレ率を押し下げる可能性があるとしました。さらに、ユーロ圏の輸出の減少や、過剰生産能力を抱えることになる国からのユーロ圏の輸入が増えることで、インフレ率にかかる押し下げ圧力が一段と強まる可能性も指摘しました。
年内に2、3回の追加利下げとの見方が有力
同総裁は、会合ごとに政策を判断していくとした上で、これまで以上にデータに依存する必要があると強調しました。次回の政策理事会は6月初旬の開催予定で、米相互関税の上乗せ部分の一時停止措置が終了する7月上旬より前ですが、不確実性が弱まる方向に向かうかどうかが注目されます。なお、短期金融市場では、次回6月の会合での利下げも含め、年内にあと2、3回の利下げが行なわれるとの見方が有力です。
![【図表】[左図]金利・為替の推移(2020年1月2日~2025年4月17日)、[中央図]物価・賃金(前年比)の推移(2019年1月~2025年3月)、[右図]PMIの推移(2022年4月~2025年3月)](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-2087_01.jpg)
![【図表】[上図]年内の政策理事会の予定、[下図]ECBスタッフの経済見通し(25年3月時点)](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-2087_02.jpg)
- 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。