2024年の国内株式市場は変動幅が大きくなったものの、日経平均株価は年間で19.2%の上昇となりました。日本経済のデフレ脱却の動きや日本企業の経営変化に注目した海外投資家が日本株の保有比率を高めたことや、1月にスタートした新NISA(少額投資非課税制度)を通じて個人投資家の資金が流入したこと、AI(人工知能)の普及に伴ない半導体関連企業に対する期待が高まったことなどを背景に年初から上昇基調が続き、7月には日経平均株価が史上最高値を更新し42,000円台まで上昇しました。その後、8月には米国の景気後退懸念が強まったことや、日銀の金融政策に対する不透明感から急落しましたが、過度な懸念が後退したことなどから短期間で反発する動きとなりました。10月以降は、日米の政治イベントを通過し、米国のトランプ次期大統領の政策に対する期待を背景とした米国株高や円安進行が下支えとなる一方で、米国の関税強化に対する懸念から上値も重く、ボックス圏での推移となりました。
このような流れを受けて始まった2025年の株式市場にとって、最大の関心事はトランプ次期大統領による通商・経済政策が日本企業の業績に与える影響です。トランプ氏が大統領就任後に打ち出す政策の内容と優先順位については不確実性が高く、特に関税強化の動向については注視する必要があると考えていますが、日本企業がこれまでサプライチェーンの多様化を進めてきたことや、グローバルな競争条件が大きく変わる可能性は低いこと、減税や規制緩和による米国景気の拡大でカバーできる部分もあることなどから、日本企業への影響は限定的なものになると想定しています。短期的にはトランプ氏の発言などを受けて市場が不安定な動きとなることが想定されますが、日本企業のファンダメンタルズは良好で、特に以下の3点が株価をサポートし、基調としては堅調な株価推移が続くと考えています。
①増益基調が続く企業業績
企業業績については、来期も増益基調の持続が見込まれます。国内景気は、これまでやや低調な推移が続いていましたが、賃上げの傾向が続く中、賃上げが物価上昇を上回ることで実質賃金がプラスとなり、個人消費の回復が見込まれるほか、人手不足に対応した設備投資の増加も期待できることなどから、内需が改善傾向になると期待されます。輸出については、米国による関税強化の影響が懸念されますが、米国の景気拡大のほか、遅れていた電子機器や産業機器の循環的な需要回復などによりカバーできると考えています。
また、人件費などのコスト上昇を製品・サービスの価格に転嫁する動きが定着しつつあり、このような日本企業の経営の変化による利益率改善効果も増益要因になるとみています。
②株主還元の拡充
2024年には、東京証券取引所の要請を受けて多くの企業が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を公表していますが、2025年はこれを本格的な実行に移す段階に入ります。投資家との対話を通じて資本効率を改善させることの重要性を多くの経営者が改めて認識し、これまで以上に積極的な増配や自社株買いなどの株主還元を拡充する企業が増えると考えています。特に、政策保有株の売却で得た資金を自社株買いに充てることで、ROE(自己資本利益率)の改善を図る動きが増えていることに注目しています。
③業界再編、M&Aの加速
2024年は、大手小売企業に対する海外企業からの買収提案や、大手自動車メーカーの統合に向けた交渉の開始、ITセクターでの買収や親会社による完全子会社化など、業界再編やM&Aに関連する動きが活発になりました。日本企業が資本効率を重視した経営に変わる中で、これまで企業が個別に進めてきた事業ポートフォリオの見直しから、業界再編につながる動きに発展する可能性が高まっており、企業の収益性改善とROEの向上が期待されます。
以上のように、堅調な業績が続き、企業経営の変化が加速していることに加えて、マクロ面でも日本経済がデフレから脱却する動きが継続していることから、海外投資家が改めて日本株に注目する可能性は十分にあると考えています。日本株の足もとの株価指標は過去との比較でまだ割安な水準にあり、トランプ氏の大統領就任後に政策の方向感がみえ始め、来期の企業業績に対する安心感が高まることで、ボックス圏を上放れる株価推移が期待できると考えています。
このような市場見通しのもとで、当ファンドでは高い競争力を維持する企業と、経営変化によって競争力を高められる企業に着目したポートフォリオを構築する方針です。特に、日本の内需回復による好業績と株主還元の拡充が期待できる、建設、金融、小売、ITサービスなどの関連企業と、循環的な業績回復が期待できる半導体、電子部品、電子材料などの関連企業に注目しています。その他、経営変化による事業ポートフォリオの見直しや、株主還元の拡充によってROEの向上が期待できる個別企業の選別に注力し、日本経済と日本企業の構造変化を捉えることで、運用成果の向上をめざします。
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