株価や投資信託の基準価額が、20,000円だから割高、2,000円だから割安、日経平均株価が4万円ならバブルとか、1万円ならバブルではない、などと価格水準だけで判断することは適切ではありません。将来の利益成長や分配金がどのようになりそうかを考えて判断することが適切です。個別銘柄の判断はプロに任せて良いと思います。

割高・割安を判断するためには、高度な分析が必要

株価は、投資家がいま想定できる企業の標準的な利益水準と将来期待できる(いずれは配当される)利益の成長を基に、投資家がどのくらい高い値段でも良いと思うのかで決まります。この“どのくらい・・・”を測る尺度の一つに、PER(株価収益率)があります。PERは株価を一株当たりの利益で割り算した倍率で、利益の何倍の価格が付いているかを知る時に利用されます。株式投信は、このように評価された株式の集まり、ということになります。

一般に、相対的にPERの数値が高ければ割高、低ければ割安と判断します。ここで確認しておきたいことは、例えば、株価20,000円で利益2,000円でも、株価1,000円で利益100円でも、PERは同じ10倍だということです。つまり、株価が高くても、低くても、PERが同じ数値であれば、利益の観点では割高でも割安でもない、ということになります。

実際、過去の株価指数とPERの関係(下図)をみると、A地点の株価指数約19,000円、PER17倍(利益は約1,100円)が、B地点で株価指数が約30,900円、PER17倍(利益は約1,800円)となり、株価指数が上昇しているのに、PERは同水準です。これは、利益が株価指数の上昇と同程度伸びたためです。つまり、株価が上昇しても利益に対する割高感はない、といえるのです。

株価指数と実績PERの推移 2018年1月~2023年10月、月末値
  • (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
  • グラフ・データは過去のものであり、将来を約束するものではありません。

タイミングよりも投資の目的を常に確認しよう

そもそも、価格水準を見て数ヵ月前よりも高いから「割高」だと考えてしまうのは、安い時に買っておけば良かったという心理(後悔)が働いたからだと思います。「良いタイミング」で投資しようと思っても、現実にタイミングを計って上手に売り買いすることは、常に株式などの価格(相場)を追いかけていても、容易ではありません。投資家は、長期的な投資テーマを自分で選ぶとしても、銘柄ごとの利益予想や割高・割安の判断を、投資信託の運用者などプロに任せて良いと思います。

大切なことは、投資で引退後の「潤いのあるくらし」を続けるためにお金を作る、という目的を常に確認しておくことです。今が人生の中で資産を蓄積する“タイミング”であると思えば、多少の投資タイミングの違いは、多くの場合、長期投資にとって問題ではないと思います。