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連載コラム

2013年1月15日

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[第2回] 将来への期待は維持されるのか

昨年11月中旬以降、日本株が大幅に上昇しています。

代表的な株価指数である東証株価指数(TOPIX)を見ると、本年1月4日に2011年3月の東日本大震災以来の高値を更新し、1月11日時点では、昨年11月の安値からの上昇率が約24%となっています。

海外投資家による日本株の買越額も記録的な規模に膨らんでいます。東京証券取引所の集計によると、昨年12月の買越額は1兆5,448億円となり、月間ベースで約7年ぶりの大きさとなりました。

株価上昇を支えている要因として、米国住宅市場の回復、中国での生産活動の持ち直し、欧州債務問題の懸念の一時的な後退などを背景とする、グローバル経済の緩やかな回復の兆候が挙げられます。

但し、上昇の主要因は、日本の政治の大きな変化であると考えられます。そこで今回のコラムでは、今後の日本の政治関連の注目点について考えてみます。

まず、何が起きたのかについて考察します。

変化のきっかけは、昨年11月14日に実施された野田首相(民主党代表、肩書きはいずれも当時)と自民党安倍総裁の党首討論にて野田首相が「16日衆院解散」の意向を表明したことでした。ポジティブサプライズだったのですが、この時点で、市場はそこまで大きく反応しませんでした。

大きく反応しはじめたのは、翌日(15日)に以下のニュースが流れた頃からです。

「安倍自民総裁:政権取ったら日銀と政策協調し大胆な金融緩和行なうと都内の講演で語った」

特に市場関係者を驚かせたのは、「インフレ目標を持つべき、2%か3%かは専門家が議論」「目標達成のために無制限に緩和していくべき」「来年は日銀総裁が代わる時期だが待っていられない」「政策金利をゼロかマイナスぐらいにし、貸し出し圧力強化を」などのヘッドラインでした。

日本ではそれまで、デフレ脱却のための金融政策は概ね実施済という考え方が支配的だったため、このメッセージは、非常にインパクトのあるものでした。

これをきっかけに、金融市場では、安倍政権になれば「円高是正(→円安)、経済成長、デフレ脱却」が実現するのではという「期待」が醸成されていきます。12月の選挙を経て政権を率いることになった安倍首相は、「将来への期待」にうまく働きかけました。政権の滑り出しは上々です。

次に、大胆な金融緩和は実体経済に影響を及ぼすのかについて考えてみます。

日本の現状に即して考えると、短期金利が事実上ゼロの際に、中央銀行が大量の資金を経済に注入することが効果を持つのかという問題提起です。

これに関しては、世界の多くのマクロ経済学者および中央銀行関係者が議論をしており、「効果あり」から「効果なし」まで諸説あります。勿論、安倍政権では「効果あり」との考え方で政策が決められているはずです。

そこで、本コラムでは「量的緩和政策は株価経路を通じて経済を活性化する」という1つの研究結果を紹介します。「量的緩和政策」(財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」第99 号、2010年2 月)という論文です(URLは本コラム最後に記載)。2001年3月から2006年3月までのゼロ金利下での量的緩和政策が景気回復に有効であったこと、特に日銀当座預金残高の増加が鉱工業生産にはっきり影響を及ぼしていることが示されています。内容は専門的ですが、興味のある方は読んでみて下さい。

では、今後のポイントは何でしょうか?

安倍政権が最終的に目指すべきは「賃金が上がり、企業収益も増加するなど経済全体がバランス良く回復していく中で物価も緩やかに上昇していくこと」ですが、ここにたどり着くには時間を要するはずです。

だからこそ、政府と日銀がそれぞれ、成長戦略や金融緩和などの政策を断固たる意志でやり抜くことができるのかが重要な注目点となります。また、その間に政策への信頼が揺らがないようにするために説明責任の重要度合いが増すでしょう。特に、金融政策を担う日銀には高い説明能力が求められます。日銀では4月に白川総裁が任期満了で退任し新総裁が就任する予定です。この人事も重要な注目点です。

最後に、安倍政権が安定政権になるか否かについて考えてみます。

まず、昨年末の衆院選挙の結果を見てみます。自民党が圧勝し、公明党とあわせて2/3以上の議席を獲得したことにより、自民党の政策が全面的に支持されたような印象がありますが、比例区の結果を見ると、必ずしもそうとは言えません。自民党の得票率は27.6%と、歴史的惨敗となって民主党に政権を奪われた2009年の衆院選挙での得票率26.7%とさほど変わらないのです。

【表】(出所:総務省)

今回、民主党を離れた票は自民・公明両党には向かわず、日本維新の会やみんなの党といった第三極にシフトしていたのです。今回の選挙結果は自民党の政策が支持されたというよりは、民主党の実績にノーが突き付けられたと考えるべきでしょう。

では、安倍政権は安定政権になるのでしょうか?

そのためには、参議院でも過半数を取得し、衆参のねじれを解消する必要があります。

参院選が7月に予定されていますが、参院選は1人区の勝敗が選挙結果全体を左右する傾向があります。2人以上の複数人区では与野党が議席を分け合う一方、1人区は選挙のたびに勝つ政党が入れ替わるケースが多いためです。参議院の議員定数は242人。今回の改選対象は、比例代表48議席と選挙区73議席。選挙区73議席のうち1人区は31、ほとんどすべてが農業の盛んな県です。

参院選に絡んで関心が一層高まるとみられるのが、日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加の行方です。経済界が支持する一方、外国の安い農作物との競争などを懸念する農業関係者や国民皆保険の恒久的堅持の観点から医師会関係者が反対するTPPへの交渉参加について踏み込んだ立場をとると、1人区を取りこぼすとの懸念が自民党内に強い中、参院選を前に判断を下すのは難しいとも言われています。安定政権を目指す安倍首相が、TPP交渉参加にどう対応するのか、さらに、先ごろ打ち出した事業規模20兆円超の緊急経済対策に続き、どのような政策や実績をアピールしてくるのか、そして、参院選は何を問われる選挙になるのかが注目点です。

第1次安倍内閣は2007年の参院選で大敗しました。安倍首相は前回の失敗から多くを学んでいると言われています。首相の舵取りに期待したいですね。

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