運用者の視点から

連載コラム

2013年7月22日

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[第13回] 「賃金は上がるのか?」

●参議院選挙

予想通り、自民党の圧勝でした。これにより連立与党が衆参両院において過半数を獲得しましたので、ネジレ状態が解消され、安定政権が確立することとなります。安定政権下では政権の意向を反映した政策を進めやすくなります。安倍首相は、引き続き、日本経済の再生、デフレからの脱却に全力を挙げて取り組むのでしょうか? これに関しては、7月1日付のコラム「「安定政権」確立後のシナリオ」に纏めてありますので、興味のある方は是非そちらもご覧ください。


●今回のテーマは「雇用者所得」

7月18日に発表された6月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比7.2%増でした。夏のセールが6月中に始まった、気温の上昇で夏物衣料がよく売れた、休日が前年比で1日多かったなどの特別なプラス要因はあるものの、東日本大震災1年後の反動増(2012年3月)や、消費税増税前の駆け込み需要増(1997年3月)および消費税増税1年後の反動増(1998年4月)を除くと過去20年で最高の伸び率となっており、個人消費の堅調ぶりが確認できます。
堅調な個人消費を支える要因として、まず挙げられるのが、アベノミクスによる資産効果です。一般的に、資産効果による消費増は高額品に向かいます。6月の商品別百貨店売上は、高級時計などを含む美術・宝飾・貴金属が16.3%増となっており、10ヵ月連続で増加しています。
ただし、こうした個人消費の堅調を将来にわたり確実なものにするためには、資産効果だけでなく、雇用者所得の伸びを背景とした消費の持続的拡大が必要です。

そこで今日は「雇用者所得」(雇用者数×1人当たり賃金)について考えてみます。


●雇用情勢

まず日本の雇用者数の推移を見てみます(図1)。2013年5月時点では5,548万人。日本の雇用者数は過去1年間に62万人増加しています。

図1. 雇用者数の推移(2003年5月~2013年5月)

図1.雇用者数の推移(2003年5月~2013年5月) (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)

失業率は図2の通りです。リーマン・ショック以降に急上昇しましたが、その後、順調に低下しています。5月現在、4.1%です。

図2. 完全失業率の推移(2003年5月~2013年5月)

図2.完全失業率の推移(2003年5月~2013年5月) (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)

求人の状況はどうでしょうか? 図3は新規求人倍率の推移です。順調に伸びており、5月現在、1.42倍となっています。

図3. 新規求人倍率の推移(2003年5月~2013年5月)

新規求人倍率の推移(2003年5月~2013年5月) (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)

このように日本の雇用環境は改善傾向を示しています。雇用者所得は、雇用者数の増加により拡大していくと見込まれています。


●賃金は上昇するのか?

雇用者数の増加に加え、1人当たり賃金も上昇する形で雇用者所得が増加すれば、消費の持続的拡大は一層確実なものになると思われます。
1人当たり賃金について考察します。厚生労働省が毎月発表している現金給与総額のデータを用います。現金給与総額とは、所定内給与(きまって支給される給与)、所定外給与(早出、残業、休日出勤などの時間外労働)、特別給与(ボーナスなど)の合計です。

図4は現金給与総額(前年同月比)の推移です。一時的な動きを除くと、給与総額はほとんど伸びていません。日本企業が賃金抑制姿勢を長く続けてきたことがわかります。直近値(5月分)も前年同月比0.1%減です。アベノミクスにより消費者マインドは大きく改善しましたが、現金給与総額を見る限り、企業マインドはまだ慎重なようです。

図4. 現金給与総額(前年同月比)の推移(2003年5月~2013年5月)

現金給与総額(前年同月比)の推移(2003年5月~2013年5月) (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)

では、企業はどのような場合に賃上げをするのでしょうか?

基本的な必要条件は、企業業績の持続的な改善と、労働市場の引き締まりです。
2013年度、2014年度の企業業績の市場コンセンサス見通しは、経常利益でそれぞれ、前年度比約23%増、約9%増となっており、持続的に改善していくと予想されています。先程考察した通り、雇用環境も改善が続いています。今後、労働市場が引き締まってくることにより、企業も賃金抑制姿勢を転換し、賃上げを許容するものと思われます。
その観点からポジティブなシグナルがあります。2013年夏のボーナスの平均支給額は前年比1.64%増となり、2年ぶりにプラスに転じました(日経新聞 7月16日朝刊「2013年夏のボーナス調査」)。中でも、円安効果などによる業績回復への期待が大きい自動車・部品のボーナス支給額は約10.7%増と大きく伸びました。非製造業では、建設や情報・ソフト、外食・その他サービスの伸びが大きく、それぞれ、約21.0%増、約7.4%増、6.5%増となっています。

今後の注目点は、賃金が上がるか否かではなく、いつ上がるのかだと考えています。具体的には、いつ現金給与総額の基調がプラス転換するのか、いつ夏のボーナスの高い伸びが所定内給与に対し好影響を与えるのかです。現時点ではポジティブに見ている専門家でも多少時間がかかるという見方が多いので、もし数ヵ月以内に上記変化が確認できればポジティブサプライズとなるでしょう。


※グラフ・データは過去のものであり、将来を約束するものではありません。

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