米大統領選挙においてトランプ氏が勝利したことを受けて、11月は、急激に世界的な株高、債券安、米ドル高が進むなど、世界の金融市場に大きな変化が起こりました。今年は、米大統領選挙だけではなく、1月に日銀がマイナス金利政策を導入、6月に英国の国民投票でEU(欧州連合)離脱が選択され、9月には日銀による新たな金融政策の枠組みが導入されるなど、市場に影響を与える重要なイベントが続き、昨年までとは投資環境が大きく変化してきました。今回は、2016年中のジパングの投資戦略の変化と、今後の運用方針についてお伝えしたいと思います。

 ジパングでは、2015年から今年前半にかけて、新興国経済の成長鈍化などを受けて、グローバル経済の不透明感が強まっていたことを背景に、情報・通信、小売、サービスなどの内需関連セクターを中心に、独自の成長要因を持ち、外部環境の影響を受けにくい企業に注目した運用を行なってきました。しかし、今年の年央からは、欧米景気が底堅く推移する中で、資源価格の上昇などを背景に新興国経済に対する懸念が薄れたことや、輸出関連企業の株価が、主要通貨に対する急速な円高の影響を十分に織り込んだ水準まで下落し、割安感が強まったことなどを背景に、徐々に機械、電子材料など、グローバルな競争力が高い輸出関連企業の組入比率を高めてきました。また、8月から9月にかけては、長期金利の底打ち感が強まったことを受けて、保険、証券を新規で組み入れるなど、金融関連セクターの組入比率を高めました。一方で、医薬品、食品、情報・通信、小売などの業種を中心に、これまでの株価上昇でやや割安感が薄れた銘柄や、業績伸び率の鈍化が懸念された銘柄の売却を進めました。

 11月の米大統領選挙の直後には、減税、インフラ投資拡大などトランプ氏が掲げる経済政策に対する期待感から、米国金利の上昇が想定されたことから、日本でも長期金利が上昇する可能性を考慮し、銀行セクターの組入比率を引き上げました。また、米国での設備投資拡大の動きが期待されることから、米国で競争力を持つ機械関連企業の組入比率を引き上げています。

 ジパングの基準価額は今年2月12日に直近の安値を付けたものの、こうした運用の結果、足元では上昇傾向となっています。今年の株式市場では、資源価格と金利がこれまでの基調から反転して上昇し始めるなど、投資環境が大きく変化し、昨年まで上昇基調にあった安定株から、景気敏感株や金融株に物色の対象がシフトする動きが見られました。こうした中、ジパングでは年央から段階的に競争力が高い輸出関連銘柄や金融関連銘柄の組入比率を高めたことや、独自の成長要因を持つ個別企業の株価上昇が寄与する状況となっています。

 来年にかけての日本株は、足元の円安・株高の動きが急速であったことから、やや過熱感が見られる銘柄も出始めており、短期的には利益確定の売り圧力などから、上値が重くなる局面も想定されます。しかし、今回の株価上昇は、「トランプ相場」と言われるような、米国の新大統領への期待感だけによるものではありません。グローバルな経済成長モメンタムが既に底打ちの兆しを見せたことや、日本企業の構造的な経営変化などが背景にあるため、株価が大幅に下落する可能性は低く、短期的な下落を挟みながらも上昇基調は持続するものと想定しています。企業統治改革の動きに加速がみられ、欧米企業と比較して見劣りするROE(株主資本利益率)の向上に向けて収益性の改善と株主還元の強化に積極的に取り組み始めていることは、今後も、日本株の中期的な上昇基調を支えると考えられます。

 今期の日本企業の業績は、円高進行を背景に厳しい状況にありますが、収益性の改善効果で為替のマイナス影響を抑制し、大きな落ち込みを避ける企業も多くみられました。また、上期の決算では、増配や自社株買いを発表する企業も多数みられるなど、株主還元強化の姿勢も続いています。来期については、主要通貨に対する円安の進行に伴ない、収益性の改善効果がフルに寄与することが見込まれ、増益基調に回帰するとともに、利益水準と比較して、株価の割安感が強まると見込んでいます。トランプ氏の政策については、依然として不透明な部分も多く、特に通商政策については注意が必要ですが、世界経済の成長率が緩やかに回復する中で、先進国の中で最も政治が安定し、企業統治改革が進む日本の株式が注目される可能性は高いと考えています。

 ジパングでは、引き続き徹底した企業調査に基づいて個別企業の中長期的な成長性の分析を行なうとともに、産業構造の大きな変化を捉えて、銘柄選別を行ないます。グローバルでの競争力が高い輸出関連企業、金利上昇で業績改善が見込める金融関連企業、内外でのシェア拡大など独自の要因で成長できる企業など、異なる視点から銘柄を選別し、バランスの取れたポートフォリオを構築することで、変化の激しい株式市場にも機動的に対応できる運用を続ける方針です。

ジパングのパフォーマンス、2010年1月4日~2016年11月25日
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • グラフ・データは過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。