2017年も残りわずかとなりました。今年の株式市況を振り返ってみると、中東情勢や、北朝鮮問題など地政学リスクへの警戒感や、仏大統領選への懸念などから、短期的には値下がりする局面もありましたが、日本企業の業績が好調に推移したことや、世界的な株高傾向などを背景に、上昇基調が続きました。2017年のTOPIX(東証株価指数)の上昇率は、20%に達しています( 12月21日時点)。この間、ジパングのパフォーマンスは好調に推移し、基準価額の上昇率は33.4%となり、TOPIXの上昇率を13.4%上回ることが出来ました。今回は、2017年の運用を振り返るとともに、2018年の運用に対する考え方をお伝えします。

<ジパングのパフォーマンス>2010年1月4日~2017年12月21日
  • グラフ・データは過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。

 2017年は、世界経済が緩やかな改善基調を続けていたことから、金利、為替なども安定した推移となり、景気全体の動向よりも個別企業の業績動向や、中長期的な成長性に注目が集まる傾向がありました。このため、企業調査をもとに、競争力の高い企業や、変革による業績改善が期待できる企業を厳選して投資を行なうジパングにとっては、銘柄選択の効果を出しやすい環境であったと考えています。この一年間、最も重点を置いてきた投資方針は、「人口減少をチャンスにできる企業」に投資する、ということです。日本の人口減少や高齢化は、今に始まったことではありませんが、団塊の世代が70歳を超えてきたことで、人手不足が深刻化するなど、経済への影響が目に見えて大きくなってきました。このような構造的な問題に対応できる企業を選別する視点として、次ページにご紹介する3点に注目してきました。

①「生産性革命」の進展でビジネスチャンスが広がる企業

 政府は、「生産性革命」を経済構造改革の柱として位置づけました。加えて、企業は、「働き方改革」に対応する必要もあり、生産の自動化や、事務のIT化に対する投資を積極化し、本業以外の業務を外部に委託するなどして、業務効率を高める努力を本格的に始めました。これによって需要の拡大が期待される、センサーやロボット向けの部品などのFA(ファクトリー・オートメーション)関連企業や、業務システムを構築するITサービス関連企業、人材派遣やアウトソーシング関連の企業などに注目しました。

②海外市場でシェアを拡大している企業

 日本で高いシェアを持っていても、市場の伸びが期待できない中では、高い成長は望めません。技術力の優位性が高い企業の多くは、海外で販売を拡大することで成長を続けています。特に、空調機器や医療機器の分野において、これまで進めてきた海外企業のM&A(買収・合併)や、代理店網の拡充などの海外展開が利益に大きく貢献し始めたことで、成長が加速している企業が増えていることに注目しました。

③業界再編や寡占化による成長が期待される企業

 小売業などの内需関連企業は、市場の成熟化や、Eコマースの急速な普及などで、厳しい環境が続いています。このような環境を受けて、競争力の弱い企業の淘汰が徐々に進み、競争力が高い一部の企業にシェアが集中する傾向が強まっています。家具やカジュアルウエア、雑貨などの分野で、圧倒的な勝ち組となった一部の小売専門店に注目してきました。

 このような視点で投資した銘柄は、概ね良好なパフォーマンスを示し、基準価額の上昇に寄与しました。一部の銘柄の株価水準には、やや過熱感が見られることから、保有ウエイトの調整などは行なっていますが、これら3つの投資視点は日本の構造的な変化が背景にあることから、2018年以降も中長期的に注目すべきカテゴリーであると考えています。

 こうしたことを踏まえ、2018年の株式市場についてはどのように考えればよいでしょう。世界の景気は、引き続き良好な状態が続くと考えています。米国は、税制改革や、インフラ投資などの政策によって、来年も今年と同様の成長を維持できる見通しで、欧州やアジアについても景気減速が懸念される状況にはありません。日本についても、人手不足を背景とした賃金上昇や設備投資、IT投資の積極化が期待されることから、緩やかな景気拡大基調は維持できると考えています。このような環境の中、日本企業は収益性を重視した経営を進めている効果などもあり、10%前後の増益基調を続けられる見通しです。これに伴なって、増配や自社株買いなどの株主還元の積極化も期待できることから、日本株の上昇基調は2018年も維持できると考えています。リスク要因としては、中東情勢や北朝鮮問題に対する懸念が強まることや、欧米の政治的混乱などが考えられますが、日本企業の業績に直接影響を与える可能性は低いため、これまでと同様に短期的な影響にとどまると考えています。

 ジパングでは、2018年もできるだけ多くの企業経営者と直接対話することを通じて、日本の構造的な変化に対応できる企業を厳選した運用を継続します。同じ業種の中でも、競争力の高い企業がより強くなり、企業間の格差が大きくなっていく傾向は、今後も一層強まると予想されます。こうしたことから、2018年もファンドマネージャーがアクティブに銘柄を選別する、ジパングの運用が効果を発揮できる局面が続くと考えています。