神山解説

  • 2025年6月30日

vol.61 Jリート投資は生活に潤いをもたらすか?



Jリートは、株式や債券とは別物の投資対象と考えてほしい理由

最近Jリート(上場不動産投資信託)への投資をどう思うか、と聞かれます。その質問は「いまから買うと上がるのか」という趣旨なのですが、私は、Jリートは上がるか下がるかより「いまの分配金利回りがちょうどよいか」を考えてほしいと答えています。

個人の投資目的(いつどうなっていたいか)とかリスクを許す度合い(損しても仕方ないと思う程度)とかによって異なりますが、私は、今Jリートを指数で保有すれば、信託報酬があるので指数と同じではないかもしれませんが、現状であればおおむね4%程度の円建て利回りが悪化しないだろうとみて(投資タイミングというよりも)この利回り水準ならJリート投資は、生活に潤いをもたらす投資対象となるのでは、と考えます。

東証リート指数の利回りの推移

 ※信頼できると判断した情報をもとに当社が作成。将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。


リートが不動産株とどう違うかをよく考えてみましょう。例えば、丸の内のビルを所有して家賃を受け取るとしましょう。不動産会社であれば、家賃を受け取ったらすべてを配当せずに、大阪駅のプロジェクトに投資し、さらに将来の受け取り家賃を増やそうとするでしょう。株式会社では、経営者が利益をさらに大きな利益機会に投資すると期待されますので、株主総会を通じて経営者に経営を任せている株主は、企業の利益成長を期待できます。

ところが、リートは、原則として家賃をそのまま分配するように設計されています。家賃を貯めて他の不動産などに投資するとリートとしての税制メリットが受けられなくなります。つまりざっくりいえばリートは本質的に成長しません。利益を再投資せず分配するからです。これが分かると、リートは株式とは性質が異なる投資対象であることが分かります。

リートへの投資は、リスクを取って事業を成長させること、その結果として価格上昇を期待することではなく、その分配金の受け取り自体を対象としています。こう考えるとリートに投資していくら上がるかがそれほど問題ではなく、利回りが大事であることが分かるでしょう。

もちろんいろいろな理由で価格は変化します。特に分配金が減ると市場参加者が考えると、価格が下がりやすくなります。分配金が減る恐れは、多くの場合①空室率が上がる、②家賃が下がる、ということに関わります。

金利が上がることを一時的に気にしている場合もあります。しかし、よく考えると金利が上がるということは多くの場合インフレが起こることが背景です。そうであれば金利よりもゆっくりとかもしれないけれども家賃もインフレと共に上がるとみるべきでしょう。金利上昇でコストが上がる、だから分配金が低下するとの恐れはあっても市場参加者がそのうち気づくことになり、一時的なはずです。

また、リートは債券とも違います。債券は決まったクーポンと償還金を約束するのが普通です。その約束を守る努力は人々に期待できますが期限が来ると償還されて投資は終わります。一方、リートは償還がないのでいつまでも分配金が期待できます。クーポンの約束はしていませんが、家賃はその分インフレなどに応じて変更できることになり機動的にインフレに対応できます。リートはインフレに強いという言い方がありますが、インフレの時ほど値上がりするという意味ではなく、インフレで金利が上がっても家賃を上げられるのであまり値下がりはしないだろうという意味です。

そして、債券と違って、リターンの源泉である不動産の面倒をみてくれるマネージャーがいることも重要です。例えばマンションの魅力を維持するために、入り口のホールの床を張り替えてくれたり、インターネットをひいてくれたりするでしょう。自分がワンルームマンション投資をすることと比べると、例えば保有物件のエアコンが動いているかといったことをリート投資では考える必要はありません。リノベートのタイミングを考えるのも第三者に任せられます。空室になるリスクはありますが、ワンルームとは異なりたくさんの不動産をまとめて持っているので全ての物件で空っぽになるリスクは低い(後ほど述べる分散効果)です。さらに、賃貸の広告をだすのもお任せできます。こうなると大家になる投資といってもずいぶん楽である(対価として運用報酬を払うからですが)ことが分かります。

リートは、不動産投資の分散効果が大きい

さて、リート投資で十分知られていないと思うことに、業種の分散が進んでいることがあります。東証リート指数に投資するインデックスファンドを想定してみましょう。そもそも指数に投資すれば、オフィスにも住宅にも少額であっても分散できることが想像できるでしょう。

Jリートは、株式や債券とは別物の投資対象と考える理由

しかし、最近の注目はそれだけではありません。インバウンドで伸びているホテルにも投資しますし、さらにデータセンターのようなテクノロジーの進展による投資先の拡大も予想されます。すでに指数でみるとオフィスと住宅のウェートが下がってきており、日本のリートも投資先分散をますます享受しやすくなっています。

ワンルームマンションへの投資と比べて、リートへの投資はさまざまな不動産に少額でも投資できる、大家になれる、しかも管理はお任せできて手間がかからないというこの金融商品の革新性がさらに進んでいるという点をよく知っておくことをお勧めします。リートは株式や不動産への直接投資とはいろいろと違いがあるのです。

日本円でインカムを生み続けるJリート ~神山解説

リートは値上がりするかどうかよりも、継続してインカムを生み続けるツール(運用手段)だと考えると良いでしょう。債券より価格変動リスクが大きいかもしれませんが、それは償還がないことと投資対象が国債など倒産しないことが保証されている商品とは違うこととが理由です。

インカムゲインが継続するイメージ

一般に実は株式よりもリスクは低いとされています。上で述べたように、経営者の判断による成長分野への投資を原則として許さないので、本質的に不動産会社よりもリスクが低いとみなされるからです。リスクが低ければリターンも低いと期待してよいのですが、株式と違って値上がりを狙うのではないという趣旨と整合的です。

しかもJリートは日本の不動産で日本円での家賃収入と分配金が基本ですから、為替リスクはないと言ってよいでしょう。もちろん円安の時に外国人が不動産投資を積極化するなどで価格が動くことなどがありますが、あまり為替変動を気にすることはないと考えてよいでしょう。

リート投資は株式などと比較せず独特のアセットクラスだとみて、その商品設計に合った投資をするのが一案です。具体的には分配金利回りで判断し、それをずっと享受できることを意思決定で大事にしたいです。株価と比べての価格の上下動は投資判断では大事ではないでしょう。

ご参考:神山解説 vol.47 インフレヘッジにJリート投資は有効?

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Jリートに分散投資ができるETF

■東証REIT指数に連動を目指すETF

1345 - 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型 (愛称:上場Jリート)

2552 - 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(ミニ) (愛称:上場Jリート(ミニ))

■日経ESG-REIT指数に連動を目指すETF

2566 - 上場インデックスファンド日経ESGリート(愛称:上場ESGリート)

神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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