- 2019年12月27日
よくわかるNISA講座② 意外と違う、NISAとつみたてNISA
つみたてNISAは単にNISAの「積立版」と捉われがちですが、NISAとは制度の中身が明らかに異なるところがあります。投資し始めた後で「そんなはずではなかった」とならないように、それぞれの制度の違いや注意点を含めて、今回のコラムでお話しします。
NISAとつみたてNISAの制度のまとめ
つみたてNISAは単にNISAの「積立版」と捉われがちですが、NISAとは制度の中身が明らかに異なるところがあります。投資し始めた後で「そんなはずではなかった」とならないように、それぞれの制度の違いや注意点を含めて、今回のコラムでお話しします。
つみたてNISAは、NISAを踏襲してできたものですが、細かい仕様はかなり異なります。
2つの制度の比較表をご覧ください。
NISAとつみたてNISAの制度の概要

※関連法令等の情報に基づき、日興アセットマネジメントが作成。将来変更になる可能性があります。
まず、非課税口座を利用して投資できる期間ですが、2014年に始まったNISAは2023年までの10年間であるのに対して、2018年に始まったつみたてNISAは2037年までの20年間です。そして、投資上限額は、NISAが年120万円、つみたてNISAは年40万円。非課税期間は、NISAが5年間、つみたてNISAは20年間です。つまり、つみたてNISAは、1年当たりの投資上限額は少額ですが、非課税期間は長いという特徴があります。
そして、つみたてNISAは名前の通り、非課税口座で積立投資をすることが前提となっています。NISAは、年120万円の投資上限額を一度に使い切っても、複数回に分けて使ってもかまいません。
しかし、つみたてNISAの年40万円の投資上限額は、定時定額で使っていかなければなりません。毎月の積立であれば、1ヵ月あたり40万円÷12ヵ月=33,333円ずつというようにです。NISAでは上場している個別の株式やREITへの投資も認められるのに対して、つみたてNISAはETFと株式投資信託のうち、特定の要件を満たしたものだけが対象です。これについては少し詳しい説明が必要なので、のちほど改めてお話したいと思います。
そして、他に注意が必要なのは、NISAとつみたてNISAを同時に利用することはできず、いずれかを選択しなければならないという点です。ただし、今年はNISAにしたけど、来年はつみたてNISAを利用するというように、年ごとに変更することができます。
つみたてNISAで投資できる商品には厳しい条件がある?!
NISAは、上場している個別株式の他、REIT、ETF、そして株式投資信託など、非常に広範な商品が投資対象として認められています。
一方、つみたてNISAは、個別株式やREITは認められず、ETFと株式投資信託だけが対象で、さらに一定の要件を満たしている必要があります。商品を(1)ETF、(2)指定インデックス投資信託、(3)指定インデックス投資信託以外の投資信託の3つに分け、全ての分類に共通の要件と、それぞれの分類に固有の要件が定められています。
つみたてNISAの対象商品の要件

※内閣府告示に基づき、日興アセットマネジメントが作成。将来変更になる可能性があります。
全ての分類に共通の要件は、「信託期間が無期限または20年以上」「毎月分配型ではない」「投資対象が株式(または株式を含む)」「解約手数料・口座管理手数料がゼロ」などです。
分類ごとの固有の要件としては、
(1)ETFでは、「指定されたインデックスに連動」「売買手数料が1.25%以下」「信託報酬率が0.25%以下」など。
(2)指定インデックス投資信託では、「指定されたインデックスに連動」「販売手数料が0%」「信託報酬率が、①国内資産を対象とするものは0.5%以下、②海外資産を対象とするものは0.75%以下」など。
(3)指定インデックス投資信託以外の投資信託では、「販売手数料が0%」「信託報酬率が、①国内資産を対象とするものは1.0%以下、②海外資産を対象とするものは1.5%以下」「純資産額が50億円以上」「運用実績が5年以上」「3分の2以上の期間で資金流入超」などです。
特に、(3)指定インデックス投資信託以外の投資信託には、非常に多くの厳しいしばりがあります。日本の投資信託のうち、いわゆるアクティブファンドは4,500本ほどありますが、(3)の要件を全て満たすものは、2019年10月1日時点で18本と狭き門になっています。
なお、対象商品のうち(1)ETFについては、2019年10月1日時点で7本あり、そのうちの4本は日興アセットマネジメントのETFです。
当社プレスリリース:「つみたてNISA」対象商品の追加について
上記の要件を満たした対象商品一覧は、金融庁のホームページで公表されています。金融庁 つみたてNISAの対象商品(2019年10月1日時点)
その他の非課税制度
NISAとつみたてNISAは、20歳以上が利用できる制度ですが、20歳未満でも利用できる「ジュニアNISA」という制度もあります。2016年に始まりましたが、口座数は、2019年6月末時点で32.9万口座ほどです。つみたてNISAと同様、NISAを踏襲してつくられましたが、細かい仕様はかなり違います。投資上限額は年80万円。原則として、口座開設者が20歳になるまで非課税の適用が受けられますが、18歳になるまでは投資資金を引き出せません。子どもが大学生になるときなどに高まる資金需要に備えて利用する人向けの制度と言えます。
金融庁 ジュニアNISAの概要
出所:NISA・ジュニアNISA 口座の利用状況調査(2019年6月末時点)
また、「確定拠出年金(DC)」は、2001年に始まった制度です。個人で拠出した掛け金は所得控除の対象となり、運用益も非課税です。サラリーマンが利用する企業型と、自営業者などが利用する個人型があり、個人型は2017年から「iDeCo(イデコ)」という愛称で、公務員や主婦なども利用できるようになりました。加入対象者が拡大したことに伴い、2019年3月末時点で、iDeCoは121万人の利用があります。NISAとの大きな違いは、原則として60歳まで投資資金を引き出せないことです。
厚生労働省 iDeCoの概要
出所:国民年金基金連合会「国民年金基金連合会業務報告書(平成30年度版)
自分自身で使い方のイメージをもってみる
非課税制度はちょっと乱立気味で、何をどのように使っていけばよいのか分かりにくくなっています。これらの非課税制度は、ご自身の年齢と投資資金の使途をマッチングさせて利用するとよいでしょう。
その際は、『生涯収支曲線』を使うと、イメージがしやすくなります。生涯収支曲線とは、年齢に応じて変化する「収入曲線」と「支出曲線」を描いたものです。一般的に収入曲線は退職まで右肩上がりで推移し、退職時に退職金を手にして、その後公的年金が支給されるまではゼロになります。
一方、支出は、車や住宅の購入、教育費など、ライフイベントの発生時に増加します。この特徴をとらえて、投資非課税制度を使い分けるとよいでしょう。例えば、企業型DCやiDeCoの投資資金の使途は公的年金の補完、つみたてNISAの投資資金の使途は旅行、車、住宅の購入費、ジュニアNISAは教育費といったようにです。
非課税制度の使い方のイメージ

※非課税制度の使い分けは一例です。
上図の使い方のイメージは一例ですが、生涯収支曲線と、投資資金の使途、年齢などを考慮して、投資非課税制度を選択していくのです。結果、多くの人は、複数の投資非課税制度を併用することになると思います。
【次回】よくわかるNISA講座③(最終回) 積立投資の効果と出口戦略(2020年1月10日掲載予定)
筆者
汐見 拓哉(しおみ たくや)
日興アセットマネジメント 国内営業企画部 部長
SMBC日興証券を経て、日興アセットマネジメントに転籍。おもに投資信託のプロモーション業務に携わる。国内外の業界動向や制度・法改正の調査・分析、販売会社向け営業戦略の立案などを手がける。
■関連法令等の情報に基づき作成したものであり、将来変更になる可能性があります。 ■当資料は、日興アセットマネジメントが少額投資非課税制度(愛称:NISA/ニーサ)についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。 ■投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。