ETF(上場投資信託)の税金

ETF(上場投資信託)の税金

  • 最終更新日:2024年1月23日(公開日:2023年6月14日)

今井 幸英

筆者 今井 幸英(いまい こうえい)
ETFセンター・シニア・アドバイザー

1985年4月 株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現 アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月 日興アセットマネジメント株式会社に入社、2008年8月よりETFビジネスに従事。2020年11月から現職。2012年、2013年 武蔵大学経済学部 非常勤講師、2014年 学習院大学経済学部 非常勤講師。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。

ETF投資を行う際にどのような税金がかかるのでしょうか?今回はETFにかかる税金についてご説明したいと思います。税金の話は少し難しいのですが、理解することによって適正な納税をし、より投資効果をあげることが可能になりますのでお付き合いください。

ETFにかかる税金とは?

個人投資家がETFの売買・保有する場合にかかる税金には以下があります。

個人投資家がETFの売買・保有する場合にかかる税金

また、ETFの内部にかかっている税金もあります。外国税額控除の制度を活用するうえで理解が必要になってきますので、後述で解説します。

さて、そもそもなぜETF投資の収益に税金がかかるのかというと、国は法を制定し行政が執行することで投資家の権利保護を図っており、その見合いで税金を徴収しています。

ETF運用時や運用の果実の受け取りにかかる税金(個人投資家の場合)

まず、ETFの売買に際し、証券会社に支払う売買委託手数料に消費税がかかります。そしてETFの売却益は譲渡所得となり税金がかかります。また、ETFの保有中に受け取った分配金は配当所得として課税の対象です。

✔ 売却益(キャピタルゲイン)に対する課税(個人投資家)

ETFの購入価格(売買委託手数料+消費税込み)より高く(売買委託手数料+消費税差し引き後)売却した差益が譲渡所得となり課税対象です。

納税方法

どのような証券口座でETF投資をするのかによって違います。
①特定口座(源泉徴収あり)
②特定口座(源泉徴収なし)
③一般口座
の3つがあります。

①特定口座(源泉徴収あり)は、証券会社が譲渡所得から税額を計算、納付してくれますので、確定申告は基本、不要になります。

②特定口座(源泉徴収なし)③一般口座では投資家が確定申告をしたうえで納税します。特定口座(源泉徴収なし)一般口座の主な違いは、証券会社が年間取引報告書を作ってくれるかくれないかの違いになります。

ETFの売却益(キャピタルゲイン)にかかる税金(個人投資家の場合)

✔ 分配金(インカムゲイン)に対する課税(個人投資家)

ETFの分配でもご説明したように、年1回以上決算をして分配金を投資家にお支払いします。分配金は配当所得となり課税対象です。

納税方法

特定口座(源泉徴収あり)の場合、ETFにかかる配当所得についてはETFの受託銀行により税金が源泉徴収され、基本、確定申告は不要です(確定申告不要制度)。しかしながら、確定申告を行い、申告分離課税または総合課税で納税することも可能です。
※特定口座(源泉徴収なし)・一般口座は税金未徴収の状態で分配金が支払われるので、確定申告が必要です。

ETFの分配金(インカムゲイン)にかかる税金(個人投資家の場合)

NISA(ニーサ)少額投資非課税制度

少額投資非課税制度「愛称:NISA(ニーサ)」を利用の場合、毎年、一定額の範囲で新たに購入したETFなどから生じる譲渡所得および配当所得が非課税となります。
当制度は証券会社で非課税口座を開設し、配当金の受取方法で株式数比例配分方式を選択するなど、一定の条件に該当する個人投資家が対象となります。ただし、他の口座で生じた配当所得・譲渡所得との損益通算はできません。

関連記事:新NISAでETF(上場投資信託)に投資したほうがいい?つみたて投資枠と成長投資枠との違いも解説

ETFの運用・運営上かかる税金(ETFの内部にかかる税金)

あまり意識されていませんが、ETFの運用・運営上かかる税金は消費税です。ETFの手数料でもご説明させていただいた信託報酬と保有有価証券売買時に証券会社に支払う売買委託手数料、その他費用に消費税がかかります。

<外国税額控除の制度の適用について>

なおETFが国内資産から受け取る利金・配当金、保有有価証券売買時に得た売却益に関しては税金がかかりませんが、海外株式等、海外資産に投資をする国内ETFに関しては海外現地で発生した利金・配当金は、現地課税がなされた後、国内ETFに入金されます。その利金・配当金を分配原資として国内ETFが分配する場合、一部の銘柄では海外現地で課税された税額を分配金にかかる所得税の範囲で控除する外国税額控除の制度が適用され、二重課税調整の対象となります。

関連記事:税金関係

ETFの運用・運営上かかる税金

確定申告は必要?

確定申告は、1年間の所得から納めるべき税の金額を計算し、国(税務署)に申告する手続きのことです。個人は、毎年1月1日~12月31日の所得をとりまとめて税の額を計算し、原則として翌年の2月16日~3月15日までに税務署に申告・納税を行います。
ETFの譲渡所得に係る証券口座、確定申告、納税方式をまとめると次の表のようになります。

証券口座、確定申告、納税方式

納税方式で証券会社の源泉徴収(特定口座(源泉徴収あり))と確定申告(申告分離課税)においては、譲渡所得および配当所得共に税率が20.315%(所得税15.315%、地方税5%)となり、確定申告(総合課税)においては投資家の総所得によって税率が変わってきます。

確定申告が不要なケース

ETFの取引で売却益(譲渡所得)が出た場合、原則として確定申告が必要ですが、NISA口座や特定口座(源泉徴収あり)の投資家には、確定申告は原則として不要です。

確定申告が必要なケース

特定口座(源泉徴収なし)と一般口座の投資家は確定申告が必要ですが、確定申告が不要な投資家(特定口座(源泉徴収あり))でも確定申告をすることによって以下の制度を使い税額を抑えることが可能な場合があり、この場合は確定申告が必要になります。

損益通算

利益と損失を相殺して課税所得額を圧縮して税額を押さえる制度です。
例えばNISA口座を除く複数の証券口座において益が出ている口座と損失が出ている口座がある場合、確定申告(申告分離課税)をして損益を通算して課税所得を圧縮し税額を抑えることが可能になる場合があります。

繰越控除

損失を翌年以降に繰り越して翌年以降の利益を相殺して課税所得額を圧縮して税額を押さえる制度です。
損益通算で控除しきれない損失が残った場合、また、単一の証券口座で損失が発生している場合も、確定申告をすることで3年間「繰り越し控除」することができます。

配当控除

確定申告(総合課税)の場合は分配金に一定率をかけた金額を税額から控除する配当控除をすることが可能です。

外国税額控除

外国ETFに投資している場合、外国ETFの分配金には海外現地で課税後の分配金が証券口座に支払われますが、証券会社は20.315%(所得税15.315%、地方税5%)の課税後の金額を証券口座に入金します。確定申告をすることで所得税額を上限に海外現地の税額を控除することが可能です。



以上、ETFにかかる税金についてご説明させていただきました。投資家の立場としては投資成果を最大にするため税金を抑えたいと考えるでしょうから運用を行う場合(ETF売買)や運用の果実を受取るときにかかる税金を良く理解したいものです。国も国民の資産形成を後押ししたいということや株式市場といった資本市場に資金を流入させて日本を国際金融センターにしたいという目論見もあり、NISA(少額投資非課税制度)、確定申告を不要とする制度、損益通算、繰越控除、配当控除、外国税額控除といった税金を抑える投資優遇制度を設けています。ちょっと面倒、手間がかかるというようなことはあるかもしれませんが、税務署に行かなくてもスマートフォンやタブレット端末からマイナンバーカードを用いてe-Taxで確定申告できるようにもなっています。大事な資産形成のために各制度を活用してみるのが良いのではないでしょうか。

(以上)

※上記は信頼できる情報に基づいて記述しておりますが、2024年1月4日現在のものですので、税法が改正された場合などには、税率などの課税上の取扱いが変更になる場合があります。税金の取扱いの詳細については、お取引をしている証券会社にお問い合わせいただくか、税務専門家などにご確認されることをお勧めします。

[今井監修]ETFのキホンシリーズ

「ETFのキホン」シリーズでは投資家の皆様にETFを良く知っていただいて、より良く活用していただきたいとの思いで書かせていただいています。